『ホットスポット』がほぐした現代人の心 “ホッとするスポット”を守ることが生きる理由に

『ホットスポット』がほぐした現代人の心

 『ホットスポット』では、終盤にかけて宇宙人だけでなく未来人、超能力者、タイムリーパーに、幽霊まで続々と登場してくる。だが、もはや清美も視聴者も驚かない。なんなら、この『ホットスポット』を観た後のテンションなら、ドラマを離れて現実社会で「実は俺……」と言ってくる人にも、食い気味で「信じます。で、どうしたの?」なんて受け入れることを前提に話を広げていくことができそうだ。それくらいイレギュラーな存在に対する私たちの境界線はゆるゆるに緩んでいる。まるで温泉につかって、心とカラダがほどけたときのように。

 なにかとカテゴライズされ、分断されがちな現代において、もう宇宙人だって未来人だって超能力者だって……みんなごくごく普通の幸せを願うという意味では変わらないのだと感じる。その人が何者と呼ばれる存在なのかどうかは、富士山の山梨県と静岡県どちらのものかという問題と同じくらい「正直どっちでもいい」ことのようにも思えてきた。

 自分たちにとって当たり前にあってほしい、ホッとするスポットを守る。そのためにそれぞれが持つ力を合わせる。私たちが生きる理由はそんなシンプルなものなのではないだろうか。それが宇宙人レベルの特殊能力を持つ人もいれば、偶然に時空を超えることができる人もいて。そして、その特別な能力を信じて、仲間を集うこともまたある種の能力だ。

 そんな、それぞれの好意に甘える代わりに、自慢話に付き合うくらいのギブアンドテイクで、私たちはゆるく温かく繋がっていくことができる。気づけば冷たく凝り固まってしまいがちな現代人をじんわりとほぐしてくれる「レイクホテル浅ノ湖」の温泉のようなドラマ。疲れが溜まったときには、たびたび見返して回復したいと思う。

『ホットスポット』の画像

ホットスポット

『ブラッシュアップライフ』チームと脚本・バカリズム再びタッグを組むオリジナルドラマ。ビジネスホテルに勤めるシングルマザーの主人公・遠藤清美が、ある日、ひょんなことで宇宙人に出会ったことから物語が展開していく。

■配信情報
『ホットスポット』
TVer、Huluにて配信中
出演:市川実日子、角田晃広(東京03)、鈴木杏、平岩紙、田中直樹、夏帆、野呂佳代、小日向文世、白石隼也、池松壮亮
脚本:バカリズム
演出:水野格、山田信義、松田健斗
プロデューサー:小田玲奈、小田井雄介、櫻井雄一、野田健太
チーフプロデューサー:道坂忠久
音楽:fox capture plan
企画協力:マセキ芸能社
制作協力:ソケット
©日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/hotspot/
公式X(旧Twitter):https://x.com/hotspot_ntv
公式Instagram:https://www.instagram.com/hotspot_ntv/
公式TikTok:https://www.tiktok.com/@hotspot_ntv

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