『べらぼう』の“かつての名子役”たち 寺田心、安達祐実、伊藤淳史らの“ギャップ”に驚き

寺田心(田安賢丸役)

最後は寺田心である。彼に関しては、つい昨日までかわいい子役だったような気がしている。いつの間にか大きくなっていて、驚いている。彼が演じるのは田安賢丸、後の松平定信だ。
彼を初めて見たのは2015年、TOTOのウォシュレット一体型便器『ネオレスト』のCMにおいてである。彼の演じる擬人化したバイ菌・リトルベンは、この世の者とは思えないほどにかわいかった。バイ菌なのに。「悲しくなるほど清潔だね」「ぼく、立派な輪染みになりたい」など名言も多い。また「ひどいトイデ(レ)だ」など、ら行がおぼつかない点もいじらしかった。
俳優としては、2018年の映画『パパはわるものチャンピオン』が意外な掘り出し物だ。観る前は、メインキャストが棚橋弘至をはじめとする現役プロレスラー及びクラスメイトの子役たちという点に、演技面での不安もよぎる。だが、なんだかんだで寺田心のかわいさが、万事解決してしまう。物語自体は、名作『チャンプ』(1979年)や『オーバー・ザ・トップ』(1987年)のような、「戦うお父さんと素直になれないその息子」という王道パターンである。
寺田心演じる息子は、悪役レスラーである父(棚橋弘至)を認めることができない。だがこの作品の良いところは、父が日和って正統派レスラーになったりしないところだ。あくまで悪役としてのプライドを貫き通す。そして、父の仕事に感動した息子は、「ぼくは 大きくなったら パパみたいな わるものに なります」と、作文にしたためるのだった。

一方『べらぼう』での彼は、「武家が精進すべきは、学問! 武芸!」という、頭カチカチの人間である。言っていることは正しいのだが、息が詰まる。正論でぶん殴ってくるタイプである。清濁併せ吞む度量のある田沼意次(渡辺謙)とは正反対であり、その性格が、後の「寛政の改革」へとつながる。史実では風紀を乱すという理由で娯楽的な書物を次々と発禁処分とし、蔦重にも大ダメージを与える(結構な罰金刑も課す)。
言わばこの物語のラスボスのような存在である。「パパみたいな わるものに なります」と言っていた寺田心は、正真正銘のわるものになってしまうようだ。感無量である。酒だ酒だ。
問題は、寛政の改革開始時28歳の松平定信を、そのまま16歳の寺田心が演じてくれるかどうかだ。演じてほしいし、演じられると思う。現に子役の先輩たち、安達祐実と伊藤淳史が、悪~い顔した役をいきいきと演じているではないか。悪~い顔で笑う寺田心を、楽しみにしている。
■放送情報
大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』
総合:毎週日曜20:00〜放送/翌週土曜13:05〜再放送
BS:毎週日曜18:00〜放送
BSP4K:毎週日曜12:15〜放送/毎週日曜18:00〜再放送
出演:横浜流星、小芝風花、渡辺謙、染谷将太、宮沢氷魚、片岡愛之助
語り:綾瀬はるか
脚本:森下佳子
音楽:ジョン・グラム
制作統括:藤並英樹
プロデューサー:石村将太、松田恭典
演出:大原拓、深川貴志
写真提供=NHK





















