『ホットスポット』バカリズムに聞く“リアリティ”の生み方 「絶対重要なセリフは特にない」

バカリズムが“仕事あるある”を生み出す秘訣

――職業の細かすぎる業務のリアルさも毎度話題になっています。どんなふうに取材するのでしょうか?
バカリズム:取材はバリバリ実施していますよ。もちろんプロデューサーさんとかスタッフさんがそれぞれアンケートしてくださったり、実際に対面で打ち合わせしてくださったりしつつ、僕もリモートなどで参加して、1回2時間ぐらいガッツリ話を聞いたりというのを何回もやっています。そういう取材対象者に打ち合わせに参加してもらって、リモートだとやっぱりわからないことがあったら、また対面で話を聞いて。それこそ1日の仕事に全然関係ない流れまで聞いていますね。「こういうとき、何喋っているんですか」みたいなマニュアル外の部分も書かなきゃいけないので、そのへんは細かく聞いてスタッフさんにメモってもらったりします。
――膨大な取材をした上で、ドラマに取り入れられる要素はだいぶおかしいですよね(笑)。制服を洗う頻度とか、冬場のドアの開閉の寒さとか。取捨選択の基準が気になります(笑)。
バカリズム:そういうのって1回の打ち合わせじゃたぶん出てこないんですよね。本人もそれをネタに使えると思わないし、無意識の部分なので、喋らないんですよ。そこを細かくちょっとずつ聞いて、引っかかって、「そこはちょっとぼかしてください」みたいなすり合わせの作業ですね。ちょっとした愚痴とかも、職場の方や企業の広報の方がいらっしゃる打ち合わせのときには、あんまり言えないんですよ。良いことばかり言って、パンフレットに書いてあるような内容ばかりになっちゃうから、広報の方がちょっと気が緩んだ瞬間とか、席を外しているときに聞いたり(笑)。そのへんはもう、喋ることがなくなるぐらいまでしつこく聞いた上で、絞り出してもらうみたいな。
――ドラマに出てくる『月曜から夜ふかし』ディレクター・岸本役の池松壮亮さんと重なりました。ちゃんと話を聞いているように見えて、別のことを考えている感じがあります(笑)。
バカリズム:だいたいどの仕事の方に伺っても「お客様の笑顔を見るために」みたいなことを一発目に言うし、「そこじゃないんだよ」「そんなわけねえじゃん」って思いながら「この後どこか行こうと思っている」とかいう話が出てくると、そこを深掘りしますね。
――絶対使えないような普通の話を延々と語る方もいそうです。
バカリズム:そうなんですよね。だからもうとにかく雑談して。僕も職場の写真とかを見ながら、「ちなみにここでこういうときって、こういうことが生じないですか」みたいなことを聞くと、「実はそうなんです」と。こっちからも探りを入れたりしながら聞きます。
――バカリズムさんは「観察力の人」と言われることが多いですが、「観察」って黙ってじっと見ているだけじゃなく、雑談力で引き出しているわけですね。
バカリズム:そうなんですよ。特に今回はかなり聞いていますね。「それ聞いてなんなの?」っていう顔をされるんですけど(笑)、かなり細かく聞いていますね。「お疲れ様でしたと言ってから、どれぐらいの時間で更衣室から出てきて帰るもんなんですか」みたいなことを聞くこともあって。例えばタレントさんでも、収録後にピンマイクを外してテレビ局を出るまで1時間くらいの人もいるし、数分で出る人もいるんですね。たぶんこういう職業でもそういう差があるのかなと思って聞いたら、「ちょっと長めにいる人がいて、みんなちょっとストレスなんです」みたいな(笑)。
――出た、高橋さん(笑)!
バカリズム:それで、なんでストレスなんですかみたいことを聞いていくわけです。
――ドラマの脚本を書かれるようになって、他の仕事の雑談力や観察力も上がりそうです。
バカリズム:どうだろうね。ものすごいしょうもないことは聞くようになりましたね。「それっていつ思いつくんですか」とか、ちょっとでも気になったことは全部細かく聞いていかないと気が済まなくなりました。だから、仕事で司会とかをやらせてもらうときに、もしかしたら、「それ聞いてどうすんだ?」「そんなことをこのゲストの女優さんに聞いて何になるんだよ」みたいに、視聴者が誰も喜ばないようなこととかどうでもいいことが気になって、聞いてしまっていることはあるかもしれないです(笑)。
――それがバカリズムさんのドラマ脚本執筆による「副作用」ですね(笑)。
人間らしさあふれたバカリズムの生み出すキャラクター

——バカリズムさんの作品には、正しい人や立派な人があまり登場せず、どの人もちょっと適当だったり、調子がよかったり、ちょっとズルかったりしますよね。今回も最初は高橋さんがお人好しで、人間がちょっとズルく見えて、最初は高橋さんの副作用が心配でしたが、そんな高橋さんもちょっと調子が良くて、ズルいところもあって。その塩梅が愛すべき人たちと言うか。
バカリズム:実際、ああいう人はどこにでもいるし、悪気はないし、そういう人たちの愚痴を言いながらも結局、「良い人なんだけどね」でおさめられるレベルなんですよね。ただ、人物像というより、そのほうが面白くなるということで。「ここで約束破ってバラしちゃったほうが面白いよね」とか、そこからその後の展開を考えているので。ずっと出ている人たちだから、なんだかんだで憎めない人、イラッとするけど、良いところもあるしという感じには、無意識に書いているかもしれないですが。
――ちょっとイラッとするけど、憎めないみたいな人にバカリズムさんご自身惹かれる部分があるんですか。
バカリズム:いや、好きではない(笑)。イラッとしないに越したことないです(笑)。でも、長く付き合っていくと、誰でも「こういうところあるけど、付き合い長いし」みたいな腐れ縁みたいな部分が出てきますよね。地元の友達とかでもそうじゃないですか。「この人、本当に自分の話ばっかりするな」とか思っても、「しょうがねえなあ」くらいで、別に付き合わないわけでもないですし。多少変なクセがあったほうが面白いと思って書いているところはありますが。
――物語はいよいよ最終章に入りましたが、今後の見どころをお聞かせください。
バカリズム:「最終章」と謳われていますが、僕は最終章と思って書いていないんですよ。基本的にはずっと平和だし、何か残酷な事件が起こったり、罪もない人が被害に遭ったりもしなくて、なんとなく笑えてちょっとハラハラドキドキするくらい。ただ、衝撃の事実は8話からちょこちょこ出てきます。後半からは半ばやけくそで、いろいろ面白いものを詰め込んでいますので、細かいところも楽しんでいただければと思います。
『ブラッシュアップライフ』チームと脚本・バカリズム再びタッグを組むオリジナルドラマ。ビジネスホテルに勤めるシングルマザーの主人公・遠藤清美が、ある日、ひょんなことで宇宙人に出会ったことから物語が展開していく。
■放送情報
『ホットスポット』
日本テレビ系にて、毎週日曜22:30~放送
出演:市川実日子、角田晃広(東京03)、鈴木杏、平岩紙、田中直樹、夏帆、池松壮亮、前田旺志郎、小日向文世、白石隼也、木南晴夏、菊地凛子
脚本:バカリズム
演出:水野格、山田信義、松田健斗
プロデューサー:小田玲奈、小田井雄介、櫻井雄一、野田健太
チーフプロデューサー:道坂忠久
音楽:fox capture plan
企画協力:マセキ芸能社
制作協力:ソケット
©日本テレビ
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