サレ夫&サレ妻ドラマがなぜ増加? “ドロドロ不倫の復讐劇”から読み解く現代人の欲求

サレ夫&サレ妻ドラマから考える現代人の欲求

 一般的な家庭に生まれ、日々を慎ましく生きている人間からすると、ひどく現実離れした話にしか思えない。けれども、不倫というものは現実に存在するし、「サレ妻」や「サレ夫」という言葉は、この不貞行為を不特定多数の人々に語ることを前提にしているものなのではないだろうか。この言葉が生まれた背景には、不貞行為をある種の“物語”として捉える心の動きがあるように思う。そして“物語”というものは、いつの時代においてもエンターテインメントに成り得るもの。インターネットを開いてみれば、この手の話はゴロゴロと出てくるだろう。そしてそれらはいつも、なかなかの盛り上がりを見せている。

 著名人の不貞行為に対するバッシングは、あまりにも過激だ。そして年々、それらは過熱の一途をたどっている。多くの人々が、会ったこともない人間を断罪し、誹謗中傷を繰り返す。この行為に至らしめる人間の心理とは、いったい何なのか。程度の大きさに関わらず、私的な断罪や誹謗中傷は許されるものではないが、不貞行為に対する批判者たちの中には、自身の正義に基づいて言論活動を行っている者もいるのだろう。これがバッシングが起きるひとつの理由だ。そのほかの理由としては、やはり他人の秘め事をエンターテインメントとして捉えてしまっているからだと思う。当事者間にしか分からない“真実”というものがあるはずなのに。大衆が知ることができるのは、表面的な事実のみである。

 『財閥復讐〜兄嫁になった元嫁へ〜』のような“ドロドロもの”が横溢しているのには、こういった背景があるのではないだろうか。ドラマはフィクションなのだから、胸を張ってバッシングをしてもいい。劇中で不貞をはたらいた者に対してバッシングが起きてこそ、その作品は成功しているといえるはず。復讐に燃える主人公を応援したくもなってくる。作品と視聴者のこの関係は、じつに健全だ。それにこうした作品たちは、視聴者が潜在的に持っている“覗き願望”を刺激しているとも私は考えている。ゴシップネタが話題になるのは、他者のプライベートを覗き込みたい欲望を抱えている者が多いからにほかならない。

 そして、こういった作品が増えれば増えるほど、視聴者はより過激なものを求めるようになる。作り手たちはより過激なものを作り出さなければならなくなる。とんでもない設定が生まれ、とんでもないキャラクターが登場するのは、こうした理由からだろう。しかもそこで俳優たちは、欲望のままに不貞行為をはたらく者や復讐に燃える者を演じる際、ダークなパフォーマンスを披露することになる。演技者としての新たな一面が顔を出すことだってあるだろう。するとエンターテインメントとしての強度が上がる。現在の流れからして、今後ますますこの手の作品は増えていくのではないだろうか。

『財閥復讐~兄嫁になった元嫁へ~』の画像

ドラマプレミア23「財閥復讐~兄嫁になった元嫁へ~」

テレ東×アミューズクリエイティブスタジオが共同制作した完全オリジナル漫画を連続ドラマ化する復讐劇。

■放送情報
ドラマプレミア23『財閥復讐~兄嫁になった元嫁へ~』
テレビ東京ほかにて、毎週月曜23:06~23:55放送
ネットもテレ東(テレ東HP、TVer、Lemino)にて見逃し配信
出演:渡邊圭祐、瀧本美織、西垣匠、宇垣美里、猪塚健太、小川李奈、宮田早苗、村川絵梨、阪田マサノブ、武田航平、渡辺いっけい、高岡早紀
原作:MANGAmuse・テレビ東京・国井桂『財閥復讐~兄嫁になった元嫁へ~』(AMUSE CREATIVE STUDIO・テレビ東京刊)
脚本:上村奈帆、倉地雄大(テレビ東京)
監督:上村奈帆、的場政行
音楽:齋藤優輝
チーフプロデューサー:祖父江里奈(テレビ東京)
プロデューサー:倉地雄大(テレビ東京)、阿南史剛、清家優輝
制作:テレビ東京、ファインエンターテイメント
製作著作:「財閥復讐」製作委員会
©「財閥復讐」製作委員会
公式サイト:https://www.tv-tokyo.co.jp/zaibatsu/
公式X(旧Twitter):https://twitter.com/@tx_premiere23
公式Instagram:https://www.instagram.com/tx_premiere23

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