『おむすび』制作陣は“311”をどう描く? 東日本大震災に向き合ってきた日本のエンタメ

近年の朝ドラでいえば、『おかえりモネ』(2021年度前期/NHK総合)があの震災をモチーフとして大きく扱っていたことが記憶に新しい。周囲の人々は被災していながら、自分だけは偶然にも被災を免れたヒロイン・永浦百音(清原果耶)が、みんなと共有できない苦しみを抱えながら未来に向かって進んでいく作品だった。これまでにもさまざまな映画やドラマ、あるいは演劇作品などが震災を描いてきたが、被災した人々の心の動きを描き出したものとして、同作は突出しているだろう。
『おかえりモネ』は救えなかった側の葛藤を描く 視聴者視点から震災を共有した作品に
現代を舞台にした『おかえりモネ』(NHK総合)は救えなかった側の苦悩を描いている。東北を襲った大震災から10年。震災の余波は今な…震災は一瞬にして私たちから日常を奪い、目に映る世界を変えてしまう。朝ドラ『半分、青い。』(2018年度前期/NHK総合)では不意にあの日がやってきて、ヒロイン・楡野鈴愛(永野芽郁)の親友のひとりが亡くなってしまった。あの一連の流れにショックを受けた視聴者は少なくないはず。しかしそのようにして、一瞬にしてすべてを変えてしまうのだ。同作では震災をヒロインの日常の一部として描いたことで、よりこのことが強調されていたように思う。
異色の朝ドラ『半分、青い。』とは何だったのか? 秋風羽織の“3羽の鳥”に込められていたもの
『半分、青い。』(NHK総合)が終わった。新しい朝ドラ『まんぷく』(NHK総合)はもう始まってしまったが、ネット上で様々な賛否両…では『おむすび』ではどうだろうか。阪神・淡路大震災に関係する一連のシーンのように、またあの重苦しい展開がここからはじまるのだろうか。
私の予想では、そうはならないのではないかと思う。いまの結はもう、無力な幼子などではない。社会的にも自立した、立派な栄養士である。その特別な力をもって、彼女にしかできない、いや、彼女だからこそできる、そんな震災との向き合い方をしていくのではないだろうか。これから本作が“震災と食事”にフォーカスすることになれば、いままでになかった角度から震災というものを見つめることになるかもしれない。そうすると結の活動は神戸にとどまらず、全国に広がっていくのではないか。

私たち視聴者の中にも、いまでも心の傷が癒えていない方が多く存在するはず。『おむすび』というエンターテインメントの力を信じたい。
■放送情報
連続テレビ小説『おむすび』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00〜8:15放送/毎週月曜〜金曜12:45〜13:00再放送
BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜8:15〜9:30再放送
BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:橋本環奈、仲里依紗、北村有起哉、麻生久美子、佐野勇斗、藤原紀香、三宅弘城、萩原利久
語り:リリー・フランキー
主題歌:B'z「イルミネーション」
脚本:根本ノンジ
制作統括:宇佐川隆史、真鍋斎
プロデューサー:管原浩
写真提供=NHK
























