『おむすび』制作陣は“311”をどう描く? 東日本大震災に向き合ってきた日本のエンタメ

放送中の朝ドラ『おむすび』(NHK総合)の世界にも、とうとう“あの日”がやってきた。ここでいう“あの日”とは、東日本大震災のこと。これまでにもいくつかの朝ドラ作品で描かれてきたこの大災害に、本作のヒロイン・米田結(橋本環奈)をはじめとする人々は、ひいては『おむすび』の制作陣は、どう向き合っていくのだろうか。
平成元年からはじまった結の物語も、気がつけばすでに20年以上の時が経過。彼女は愛する翔也(佐野勇人)と結婚して幸福な日々を築き上げ、やがて子どもにも恵まれた。結たちの日常を見つめ続けてきた視聴者の多くが、目を細めてここしばらくの展開を眺めていたのではないだろうか。そんなところを、あの大きな地震が襲ったのである。

朝ドラとは、物語の主人公の人生を描きながら、その背景にある社会をも描き出すものだ。『おむすび』は結が高校生の時期からスタートしたから、すでに時代は平成だった。となれば、その数年後にやってくる東日本大震災も必然的に描かれることになるはず。物語のはじまりは福岡の糸島だったが、米田家の現在の住まいは神戸であり、結はここで幼少期を過ごした。米田家は1995年の1月17日に発生した阪神・淡路大震災を経験しており、本作の前半では結をはじめとする人々があの震災とどのように向き合い、その後の世界をどう歩んでいくかを丁寧に描いてきた。
いまでは誰もが笑顔を取り戻したが、いまだにトラウマとしてあの日のことは一人ひとりの心に刻まれているはず。東北と神戸は物理的にずいぶんと距離があるが、2011年3月11日に起きたこの地震によって、あの日の記憶がフラッシュバックしてしまう者もいるのだろう。こうして作品に触れることでそうなる人もいるのではないかと思う。
少し前に「2025新春スペシャル版」が放送されたドラマ『監察医 朝顔』シリーズ(フジテレビ系)も東日本大震災を扱っているし、まもなく封切りとなる映画『サンセット・サンライズ』でも震災以後の世界を生きる宮城県南三陸の人々の姿を描いている。毛色はまったく異なるが、それぞれにあの震災に向き合おうとしている作品だ。