王道なのに新鮮だった『涙の女王』、ジャンルを横断する傑作も 2024年韓国ドラマ座談会
演出がおしゃれだった『Mr.プランクトン』
咲田:今年はディズニープラスを観ることが結構多かったのですが、そんな中でもさっき挙げてくださったNetflix『Mr.プランクトン』は気になってました。
にこ:すごくおしゃれな作品ですよね。ストーリーとしてはまずウ・ドファンさん扮するへジョが不治の病で余命宣告されているところがスタートなので、視聴者は“へジョは本当に死んでしまうのかな?”と気にしながら観ていくんですよね。さらに彼は生まれたときにミスがあって、実は父親と血がつながっていなかった。そこで本当の父親を探しにいくロードムービーになるんですが、元カノのイ・ユミさん扮するジェミを旅の道連れにしていきます。ジェミは児童施設で育ったせいもあり、ものすごく自分の子供が欲しいと切望しているのに、早期閉経してしまうんです。余命宣告されたヘジョ、絶望している元カノのジェミ、そんな彼女を追いかける婚約者で名家の一人息子フンの三人がロードムービーを繰り広げる中でそれぞれの愛を見つけていく話になっています。まずウ・ドファンさんの色気がすごくて、“今までどこにそんな色気が?”っていうくらい過去作とは全然違いました。オ・ジョンセさんは『サイコだけど大丈夫』のムン・サンテを彷彿とさせる、人が良くて純粋で子犬のようなキャラがすごく良かったです。
荒井:私はウ・ドファンさんの『ブラッドハウンド』が好きだったんですが、言ってくださったみたいに今回は過去作とはちょっと違った意外なキャラだなって感じました。イ・ユミさん、オ・ジョンセさんという3人が出す不思議なムードのケミストリーがすごく楽しかったです。
にこ:ロードムービーなので車に乗って旅をしているわけですが、オープニング映像に出てくるインターチェンジの標識にキャストやスタッフの名前が載っていたりと凝った演出も楽しいですよね。劇中の音楽も登場人物たちの心情を表していました。不思議なタイトルの“プランクトン”に込められた意味も深かったです。浮遊するようにその日暮らしをしている主人公なんですが、プランクトンってどういう存在なのかだんだん明かされるんですよね。DNA上の血の繋がりのない家族の中で暮らしていて、改めて本当の父を探すんだけれども、実は本当に彼が探していた愛は……っていうところにボロ泣きしてしまいました。それから今まさにドハマりしているんで今年に入れていいか迷うんですが、『その電話が鳴るとき』! タイトルからして完全スリラーかなって思ったらドキドキさせる激情ロマンスでした。ユ・ヨンソクさん扮するペク・サオンがめちゃくちゃカッコいいんですよね。ユ・ヨンソクさんは、悪役もよく演じられてる俳優ですが、本作は女子が大好きな冷酷さ、ツンデレ具合(笑)! 前半の少し嫌な感じの性格やスリラーのパートもプロットがすごく綿密に作られてて、上手く話が転がってきましたよね。
荒井:「第1話からこういう展開なのか!」って驚かされました。女子の好きな冷酷さっていうのは分かります(笑)
にこ:今、ちょうどデレターンに入りました(笑)。
咲田:私は途中で断念してしまいました。今結構溜まってしまっている作品が多くて……『トランク』も止まってますし……。
荒井:『トランク』、私はコン・ユさんがすごく変な家に住んでるんだなと思って観ていました(笑)
咲田:少し鬱々となってしまいそうでひとまず置いておこうと思っています(笑)。
にこ:『その電話が鳴るとき』はかなりリピートしてるんです。ペク・サオンのこじらせ夫が見せる“ツン”の面がものすごく刺さるんですよ。韓国ドラマあるあるの描写ですが、クラクションを鳴らしまくって車で追う追走劇とか、嫉妬と心配のない交ぜな怒りを見せる姿とか、もうたまらないですよ! 物語も謎が今明かされてきているところです。
要素を詰め込んだ“ミックスジャンル”がトレンドに
――2025年の期待作だとみなさん何がありますか?
荒井:やはりIUさんとピョン・ウソクが共演する『21世紀の大君夫人』は見逃せないですよね! それから昔からずっとカン・ドンウォンが好きなので、久々のドラマ出演かつチョン・ジヒョンと共演する『北極星』が楽しみです。
にこ:分かります! キム・ヒウォン監督ですしね。
荒井:キム・ウンスクさんの次回作『全てが叶うだろう』は、キム・ウビンさんとスジさんが出演しますね。また、この前セットで火事があったようで大丈夫なのかなって思っていますが、ナム・ジュヒョクさんの兵役後復帰作『東宮』も期待しています。
にこ:『東宮』は幽霊とか怪奇的な話ですよね。IUさんは2023年に撮影が終わっていたパク・ボゴムさんとのドラマ『本当にお疲れさまでした』が先に来ますよね。ディズニープラスでキム・スヒョンさんとチョ・ボアさんの『ノックオフ』も。来年はヒョンビンさんとチョン・ウソンさんのドラマもありますよね。チョン・ウソンさんは大変なことが起きていますが……(苦笑)。
荒井:ちょっと厳しいことに(苦笑)。作品は『メイド・イン・コリア』ですね。
にこ:あと、サスペンスとラブロマンスが混ざっている『その電話が鳴るとき』もそうでしたが、ミックスジャンルの作品ってもしかしたら今後増えそうじゃないですか? 韓国ドラマ特有じゃないですかね。たとえば『となりのMr.パーフェクト』とか、たぶんロマンティックコメディというと少し違うじゃないですか。『その電話が鳴るとき』は、サスペンスものでも良い意味での裏切りがありますよね。韓国ドラマって、ジャンルを本当に横断していると思います。
荒井:ジャンルを横断すると言えば、『照明店の客人たち』はご覧になっていますか? ビジュアルもファンタジックで入りはホラーなのかなと思ったら、かなり社会的なテーマが散りばめられていて見事でした。ここ数年、韓国ではドラマにしろ映画にしろオカルト的作品が増えた感じがあるんですが、『照明店の客人たち』はその流れに乗りつつも他にも要素を詰め込んだ作りになっていました。
にこ:でも、ストーリーが全然取っ散らからないんですよね。徐々にピースがはまっていく快感があるし、心を揺さぶられて泣けてしまいます。すごく底力がある。韓国文化に特有な喜怒哀楽の激しさがドラマの中でしっかり表現されるからこそ心をわしづかみされるんですよね。だから韓国ドラマはやめられない! という。
荒井:そう! しかも、わざとらしく感じられないんです。やっぱり一緒に笑って一緒に泣いてしまう。観ているこちらの感情の動かし方っていうんですか。登場人物に感情移入できるのが韓国ドラマの良さですよね。