『照明店の客人たち』細かな伏線は韓国ドラマ屈指? ホラー×ミステリーの圧倒的見応え

『照明店の客人たち』伏線は韓国ドラマ屈指?

 『照明店の客人たち』は、ちょっと難解だが、これまでのありきたりな韓国ドラマに飽きた人に、ぜひチャレンジしてほしい力作である。

 本作が大きな話題になっているのは、何といっても脚本を原作者で著名なウェブトゥーン作家のカン・フルが務めていること。カン・フルは、ディズニープラスの2023年の大ヒット作である『ムービング』の原作者兼脚本家でもある。『照明店の客人たち』の原作も、2011年に韓国のウェブトゥーンで連載されていたヒット作だ。

 韓ドラファンなら、『ムービング』で高校教師を演じた俳優のキム・ヒウォンが演出を務めていることが気になった人も多いだろう。本作がドラマ初演出である。個人的にとても好きな俳優だが、キム・ヒウォンといえば、韓国のバラエティ番組『車輪のついた家』でパラグライダーに初挑戦し、その景色に感動して空の上で号泣していた姿が忘れられない。齢50にして繊細な感性を失わずにいる人柄に感激した。

 メインキャストには、そんなキム・ヒウォンと共演経験のある人気と実力を兼ね備えた俳優陣がずらり。チュ・ジフンやパク・ボヨンのほか、前作の『遊んでくれる彼女』でギャップのある魅力を発揮したオム・テグ、アイドルグループAOAのキム・ソリョンなどが出演。ポスターなどはチュ・ジフンが中心のものが多いが、さまざまな登場人物を主演級俳優が演じる群像劇的なスタイルは『ムービング』と同じである。

 だが、『ムービング』のような内容を期待して観た人は、序盤を観て面食らったかもしれない。ぐいぐいストーリーが進んでいく同作とは異なり、『照明店の客人たち』はあまりに静かだ。しかも、ホラー的要素が強い。

 生と死の境界にいる人々が、チュ・ジフン演じる謎の男が営む照明店に集まっているらしいことは次第にわかってくるのだが、それぞれの登場人物はどんな関係性なのか、繰り返し登場する病院や学校はいったいどんな意味をもつ空間なのか、なかなか見えてこない。目を凝らせば伏線がそこここにちりばめられており、考察好きの心をくすぐる内容ではあるが、これでは謎ばかりで全容が見えなさすぎ……ではないか。

 実は原作も発表当時「導入部の展開が遅すぎる」といわれたそうだが、さまざまなところでも指摘されているように、それが第4話でぐいっと動き出す。第2話や第3話で離脱してしまった人がもしいたら、ぜひ第4話まで観てみることをおすすめしたい。舞台での経験が長いキム・ヒウォン監督は、「第1話から第4話が一幕、第5話から第6話がブリッジ、第7話から第8話が二幕に相当する」とインタビューで答えている(※)。つまり序盤の静けさは、大きな意図をもって演出されているのである。

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