字幕の標準化の可能性は?  パラブラ代表が語る、すべての観客に開かれた映画の在り方

山上庄子が語る、バリアフリーと映画の在り方

日本ではバリアフリー=福祉的なものと捉えられがち

――映画業界におけるバリアフリー対応に関して、日本と海外を比較した場合の違いは何だと感じていますか?

山上:周りの人たちと情報交換している中で、「バリアフリー」の捉え方が国によって違うというのは感じます。アメリカには「ADA法」という、障害者が社会に参加することを保障する社会モデルの考え方をベースとする法律がありますね。日本も障害者差別解消法は大きなポイントにはなっていますが、まだまだ福祉的なこと、特別なもの、という捉えられがちなところは大きいですね。

――興味深いです。「映画における字幕版の上映期間の短さ」について、ユーザーの方からは「期間をつけるのではなく、1日1回でもいいから上映中、毎日やってほしい」という意見もありました。

山上:「UDCast」ができたことによって、音声ガイドの場合は日を選ばず作品を鑑賞できるようになりました。一方で、字幕はアプリがあくまで第二の手段なので、やはり字幕付き上映が一番求められているのですが、字幕付き上映はまだまだ少ない状況です。上映回数が増えない理由は、多くの方には必要ないものというイメージが強いためではないかと思います。 「バリアフリー字幕付き上映」の表示を見ると、一般の方は自分は行っちゃいけない上映なんじゃないかと、その上映回を避けてしまう人もいるみたいなので、そのイメージは変えていきたいなと思っています。

――極端な話かもしれませんが、全映画に字幕が付く時代が来ると思いますか?

山上:できるかできないかで言えば、できると私は思います。ただ、全作品に字幕を付けたとしても、ご指摘いただいたような上映期間の短さだったり、みんなが自由に観られる環境が追いついてないと意味がないので、環境作りも並行して進めていく必要があると思います。 現状、映画の完成は、バリアフリー版を制作する前の状態ですよね。なくても劇場公開はできますし、オプションになっているのが今の状況だと思います。やはり、理想はバリアフリー版までの制作=映画の完成という位置付けにすること。1番のバリアは人のバリアだと思います。先入観や無関心が一番のバリアで、もっと映画の見方として広げていきたいですし、当然、映画だけではなく社会全体が変わっていくことが必要だと思います。そのためにも、まずは広く一般の方々にこうした現状を知っていただくこと、当たり前のことにしていくことが、パラブラにとって最大のテーマだと思っています。

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