満島ひかりの娘役で鮮烈な銀幕デビュー　新人・青山姫乃が歩む“求められる”役者道

　新人女優・青山姫乃が、中野量太監督作『兄を持ち運べるサイズに』で鮮烈なスクリーンデビューを果たす。「役と自分が似ている」と運命を感じたオーディションから、まさかの豪華共演陣に震えたクランクイン前。特に母親役の満島ひかりとは、カメラの外でも本当の親子のような絆を育んだという。満島演じる加奈子の娘・満里奈として青山はどんな時間を過ごしたのか。初めての現場で専門用語に戸惑い、難しい「泣きの芝居」に苦戦しながらも、大先輩たちから受けた刺激、演じることの楽しさ、そして上京生活のエピソードなどたっぷりと“いま”の自分を語ってもらった。（編集部）

【写真】フレッシュさ全開！　青山姫乃インタビュー撮り下ろしカット（全10枚）

満島ひかりに「タメ口でいいですか？」

――今回の映画出演はオーディションで決まったそうですが、手応えなどいかがでしたか？

青山姫乃（以下、青山）：オーディション用の台本をいただいたときに、私と満里奈はすごく似ているなと感じて、「この役をやってみたい」と思いながら受けていました。明るかったり、ルールにちょっと厳しかったり……自分で言うのもなんですが（笑）、そのあたりが近いかなと。だからこそ演じやすい部分もあって、自分の思うようにオーディションで表現できました。

――実力を出し切れたわけですね。合格の知らせを受けたときにはどんなお気持ちでしたか？

青山：「何だろう？」と思ってLINEを見たら、「受かりました」という連絡だったのでビックリしました。私が「受かったかも！」と言ったら、家族みんながソファの周りに集まってきて。「えっ本当!?」「やったじゃん！」とすごく喜んでくれて、うれしかったですね。

――クランクイン前は、やはり緊張しましたか？

青山：すごく緊張しました。初めてのお芝居のお仕事だったので、現場のことは何もわからないし、お母さん役の満島さんとうまくお話できるかなとか、いろいろと考えてドキドキしていました。

――母役の満島さんをはじめ、叔母役の柴咲コウさん、亡くなった父役のオダギリジョーさんと、共演者もすごいメンバーですもんね。

青山：そうなんです。オーディションを受けたときには俳優さんの名前は出ていなかったので、詳細を見て「えええ!?」って（笑）。ずっとテレビの中でしか見たことのない方々だったので、お会いできて、さらには一緒に共演させていただけるなんて本当に驚きました。

――まさか満島さんが自分のお母さんになるとは思わないですもんね（笑）。実際に現場に入ってみてからはいかがでしたか？

青山：わからないことだらけで一人でアタフタしていたら、満島さんが優しく話しかけてくれて、いろいろなことを教えてくれました。カチンコの合図でお芝居が始まるのかと思っていたら、監督の「よーいスタート」という掛け声で始まることも初めて知って。“お茶場”という場所があることも、“ウエス”というタオルがあることも、今回初めて知りました（笑）。毎日、新しい発見ばかりでした。

――母親役の満島さんとは、どのように関係性を築いていったんですか？

青山：顔合わせのときに、「普段からママって呼んでいいですか？」と「タメ口で話してもいいですか？」という2つのお願いをしました。すごく緊張しましたが、優しく「いいよ」と言ってくださって、そこからはずっとタメ口で「ママ」と呼んでいました。最初はたまに敬語になったりもしていたのですが、だんだんとタメ口にも慣れてきて、本当のお母さんのようにずっとお話させてもらって。満島さんがいないとちょっと不安になっちゃうくらい、一緒にいると安心する存在になりました。

――満島さんとの会話の中で、特に印象的だった言葉はありますか？

青山：特別な言葉よりも、雰囲気作りや行動で伝えてくださることが多かったと思います。何気ない会話で和ましてくださったり、撮影が始まる前に3秒くらいのハグをしてくれたり、「お母さんだよ」と優しく包まれている気がして。撮影が終わってからも、この作品のInstagramのアカウントが立ち上がったときに、DMでハートとピースのスタンプを送ってくださったんです。今でもそばにいてくれる感じがしてすごくうれしかったし、これからもずっと特別な存在だと思います。

――初めての映画出演となりますが、お芝居をしてみていかがでしたか？

青山：今までレッスンでやってきたことを初めて発揮する場でもあったし、「自分のお芝居が周りに浮かないか」という不安もありました。でも、1シーン1シーン現場や満島さん、柴咲コウさんから刺激をいただいて。経験をたくさん積んで、自分に自信を持てるようになった期間になりました。

――共演者の皆さんに憧れを抱くようなこともありましたか？

青山：私は自分から監督に質問をする勇気がなかなかもてなかったんですが、満島さんが私の隣で「私はこうだと思うんですけど、どう思いますか？」とまっすぐに質問されているのを見て、私もこんなふうに思いを伝えたいなって。それをきっかけに、自分から監督のところに行ってお話しできるようになったので、今後につながる大事な経験だったと思います。

「そのままでいい」監督の言葉と、苦戦した“涙”のシーン

――監督からはどんなお話がありましたか？

青山：一番多かったのは、「そのままでいいよ」という言葉でした。それは褒め言葉だと思っていて、“何もしていなくても満里奈として存在できている”ということがうれしかったです。細かく「こうしてほしい」というアドバイスではなくて、「そのままでいい」という一括りの言葉に、いろんな意味が込められていたと思います。

――役作りとして準備したことはありますか？

青山：お父さんと離れて暮らしていて、やっと再会できたのが亡くなってしまった姿……というのは私にはない経験だったので、離れて過ごしていた満里奈の気持ちを考えたり、「お父さんはどんなふうに暮らしていたのかな」と想像を膨らませたりしながら、満里奈の感情を埋めていきました。またクランクイン前に、監督から役作りのために、映画で描かれる4日間の前の満里奈が15歳までどのように育ったのかを想像して、父と離婚後女手一つで一生懸命育ててくれた母（加奈子）に向けて、良一を迎えに行く前日、不安に思っている加奈子を勇気づけ、今までの感謝の気持ちを伝える手紙を書くというお題もいただきました。

――満里奈のバックボーンを掘り下げた上で、現場では自然体で演じていた？

青山：そうですね。私は満里奈のことを羨ましく思うところもあったんです。思っていてもできないことってたくさんあって、満里奈はそれをやってくれるので「だったら私も気にせずやっちゃおう！」と楽しく演じていました（笑）。満里奈は嫌な顔もうれしい顔もすごく表情に出やすいんですけど、私は感情を外に出さないタイプで。自分の気持ちを素直に伝えられないことが多かったので、満里奈から“気持ちを伝える”ということを学びました。

――お芝居について、成長できたと感じることはありましたか？

青山：泣くお芝居が多くて、なかでも“感情を顔に出さずに泣く”という車内のシーンがすごく難しかったです。感情を押し殺して明るくセリフを言わなくてはいけなかったので、気持ちを持っていくのも大変でした。しかも、監督が「（オーディションの際に）そのシーンのお芝居を見て姫乃に決めたんだ」とおっしゃっていたので、「ここは絶対に一回で撮りたい」と思っていました。結局、うまくいかなくて2回撮ったんですけど、監督との思い出のシーンであり、苦戦したシーンでもあって。感情をこらえて泣くというお芝居を一度もやったことがなかったので、成長もできたと思います。

――完成した映画をご覧になった感想は？

青山：大きなスクリーンに映った自分を観るのが恥ずかしかったです（笑）。でも、映像を観ながら「こう映るんだ」とか、「もっとこうすればよかったな」とか、そのシーンを撮ったときのことを思い出したりもして。映画は2時間くらいですけど、撮影をした1カ月間と同じ心の動きをしていたと思います。嬉しかったり、悲しかったり、思い出に浸って「いいなぁ」と思いながら観ていました。

――ご家族もご覧になったんですか？

青山：まだ観ていないので、公開されたらみんなで観に行きます。でも、やっぱりちょっと恥ずかしいですね（笑）。