『夏目友人帳』『化け猫あんずちゃん』『ラーメン赤猫』 “猫”が2024年夏のアニメを席巻
猫が世界を征服する。そんな冗談にも聞こえる言葉が、現実味を帯びる時代が来ているのかもしれない。街には猫カフェが軒を連ね、書店の棚には猫本が溢れる。さらにSNSを開けば愛らしい猫動画の嵐で、私たちの日常は完全に「猫」に支配されつつある。
この猫旋風は、アニメ界にも確実に吹き荒れている。『となりのトトロ』のネコバスや『猫の恩返し』のバロンに代表される神秘的な化け猫たちは、日本アニメにおける猫の魅力を存分に引き出してきた。特に2024年の夏は、『化け猫あんずちゃん』『ねこのガーフィールド』『ラーメン赤猫』など、“猫アニメ月間”とも言えるほどに、猫づくしの作品が目白押し。
『猫の恩返し』『夏目友人帳』『化け猫あんずちゃん』 タイプごとに異なる“猫キャラ”の魅力
5月3日に日本テレビ系『金曜ロードショー』で放送される『猫の恩返し』(2002年)は、スタジオジブリ制作の長編アニメ映画『耳をす…
中でも注目は、妖怪が見える少年と不思議な猫が織りなす『夏目友人帳』の最新作だ。8月30日の特番を皮切りに、秋からはTVアニメ第7期がスタート。猫好きもそうでない人も、この異色のコンビが繰り広げる物語に再び引き込まれることだろう。これほどまでにアニメで活躍するのは、なぜ“猫たち”なのだろうか。
まず挙げられるのは、猫特有の自由奔放さだろう。犬が従順でかわいらしいのに対し、猫は本当に生きたいように生きている。好きなところで寝そべり、気まぐれに遊び、時に人を無視する。そんな自由奔放な姿に、多くの人が憧れと愛おしさを感じるのは、アニメの中でも現実でも変わらないのかもしれない。
例えば、『化け猫あんずちゃん』の主人公あんずは、中身は中年男性のような化け猫である。按摩のアルバイトをしつつ草成寺に居候を続け、釣りやパチンコを楽しむ気ままな生活を送っている。
そのものぐさな様子やけだるげな雰囲気にクスッと笑ってしまう一方で、あんずの生き方は、多くの現代人が密かに憧れる「自由」の象徴とも言えるのかもしれない。池照町の人との温かな交流と毎日が夏休みのようなあんずの暮らしを見て、どこか羨ましさを感じた観客もいたのではないか。
一方、『ラーメン赤猫』の猫たちも、その本来の“猫らしい”性質を保ちながら、妙な人間臭さを醸し出している。
店長の文蔵は牡の茶トラ猫でラーメン赤猫の店長であり、メイン調理担当。その性格は職人気質でストイック。しかし、客ともいえない迷惑な人間が店に入ってきたら、野良時代に会得した凄味で追い出すことも辞さない。彼らは人間の常識に縛られながらも、本質的な猫としての威厳を失わない。この絶妙な自由さのバランスが、視聴者を魅了し、人気を呼んだのではないだろうか。