『ミッション:インポッシブル』第1作の意外な事実 トム・クルーズとデ・パルマの化学反応

『ミッション:インポッシブル』の意外な事実

 そしてクライマックスである。いろいろあってトムクルさんは、爆走する列車のうえで追いかけっこをすることになる。もちろん、当時の技術的な問題もあり、実際に走っている列車の上でやっているのではなく、ブルーバック合成なのだが……そこはトムクルさんである。このシーンにも徹底的にこだわった。

 このシーンを撮影中に、トムクルさんとスタントコーディネーターの人は、「迫力が足りない」と悩んでいた。特に爆走する列車の「風」感が出せていないと。セット内にジェットエンジンを持ち込むなど(そんなもんを持ち込めるのが、さすがハリウッドである)、いろいろ試行錯誤をしたが、なかなか「風」感が出ない。悩むトムクルさんだったが、過去に使ったスカイダイビングの訓練用の機械を思い出した。それは飛行機から飛び下りたときの風を体験できる機械で、もちろん強力なエンジンがついている。これは使えると思ったトムクルさんたちは、その強力なエンジンをさらに改造。時速224kmの風が出るようにした。こうして完成した特殊な機械によって、クライマックスシーンは撮影された。

 ただでさえ強力なエンジンをさらに改造したせいで、俳優たちは風に飛ばされまくったそうだ。当時のトムクルさんも来日時に、こんなふうにコメントしている。「突風で飛んできたゴミが目に入ったら失明してしまうから、食事ができるくらい、床をピカピカに磨いて撮影したんだ」(※)。高速で飛ぶがゆえに、ただのゴミすら弾丸に変わるのだ。バトル漫画でよく見る理論である。そんな危険すぎる改造エンジン作戦だったが、結果は大成功。列車の上を這いずり回るトムクルさんたちの顔は、演技と言うよりマジであり、迫力満点のシーンになっている。やはり還暦前後に崖からバイクで飛ぶ男は、若い頃から違うものだ。

 サスペンスの名手であるブライアン・デ・パルマの手腕と、若きトムクルさんのフレッシュな魅力、そして現在のトムクルさんにも繋がるリアルなアクションへのこだわり……本作は様々な魅力が詰まった不朽の名作である。この機会に是非、観賞をオススメする。そして欲を言えば……続編の『M:I-2』(2000年)で、映画全体が凄い狂い方をするのを目撃してビックリしてほしい。いやね、『1』も凄いんですが、『2』は『2』で別の方向性で凄くて、映画って自由だなと思えるはずで……この辺の話は、また次回にさせてください。そのようなわけで、引き続き何卒よろしくお願いします。

参照
※『キネマ旬報』1996年 8月上旬号より

■放送情報
『ミッション:インポッシブル』
日本テレビ系にて、6月7日(金)21:00~23:09放送 ※15分枠拡大
出演:トム・クルーズ、ジョン・ヴォイト、エマニュエル・べアール、ヘンリー・ツェーニー、ジャン・レノ、ヴィング・レイムス、クリスティン・スコット・トーマス、バネッサ・レッドグレイブ、インゲボルガ・タプクティナ
監督:ブライアン・デ・パルマ
脚本:デヴィッド・コープ、ロバート・タウン
原案:デヴィッド・コープ、スティーヴン・ザイリアン
製作:トム・クルーズ、ポーラ・ワグナー
音楽:ダニー・エルフマン
テーマ曲:ラロ・シフリン
©2024 Paramount Pictures. All rights reserved.

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