“トム・クルーズ映画”の快作『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』

『M:I 7』“トム・クルーズ映画”の快作

 トム・クルーズ、61歳。還暦男が走る! 電車のうえで戦う! 崖からバイクで飛ぶ! 何の話かと言えば、もちろん『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』(2023年)である。あらすじは一応あるが、もうザックリ「世界の危機に凄腕スパイのイーサン・ハント(トム・クルーズ)と仲間たちが立ち向かう!」とだけ理解しておけば大丈夫だろう。これは世界でトムにしか作れないスター映画であり、アクション映画と言うより「トム・クルーズ映画」の新たな快作である。

 スター映画とは、主演を務めるスターを観に行く映画である。スターの活躍と魅力が存分に発揮されれば良いのであって、少しくらい物語のつじつまが合わなくても、無茶苦茶な話があっても許される映画……いや、むしろつじつまが合わず、「そうはならんやろ」と観客が冷静に思いつつも、「でも、この人だからなぁ」と許容してしまうのがスター映画だ。

 この点を本作は大いに自覚している。普通の映画だったら下手すれば観客が冷めてしまうようなシーンが多々あるが、この点をトム・クルーズという絶対的な存在で何とかしている。たとえば「悪役に取り囲まれて詰み状態の人物のところへ、偶然にもトム・クルーズが突っ込んできて、勢いで悪役を吹き飛ばして何とかなってしまう」なんてシーン、典型的な「そうはならんやろ」だが、不思議と観ている最中は「トム・クルーズだから仕方がない」と多くの観客は許せてしまうのだ。

 本作は全編そんな調子であり、『ワイルド・スピード』シリーズばりにいいかげんなところは本当にいいかげんである。というか作っている人たちも「まずアクションを撮って、そこに物語を付け足す」と公然と語っているわけで。かなり歪なつくりの映画であることは疑いようがない。しかし、そんな歪な点を観客は許せてしまう。では、どうして我々は「トム・クルーズだから」と許せてしまうのだろうか。答えは簡単だ。トム・クルーズという金看板が通用するのは、彼がムチャクチャに体を張っていること、常軌を逸した情熱と覚悟を持って映画作りに臨んでいることを我々が知っているからだ。

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