『いちばんすきな花』は誰かの“救い”となるドラマだった 80分超えのメイキングは必見!

『いちばんすきな花』メイキングは必見の内容

 誰かにとっての救いとなる。『いちばんすきな花』(フジテレビ系)は、そんなドラマだった。

 学生時代に、「2人組作ってください」と言われるのがすごく嫌だったこと。教室移動の授業がない日は、ちょっぴりホッとしたこと。大人になってからも、同窓会に行きたくなくて。でも、行かないと誰かに何かを思われるんじゃないかと不安になって、参加の方に丸をつけてしまう。『いちばん好きな花』は、そんな“あなた”に向けたドラマだ。

 社会現象となったドラマ『silent』(フジテレビ系)のプロデューサー・村瀬健と、脚本家の生方美久が再タッグを組むということで、放送開始前から期待値が高まりまくっていた『いちばんすきな花』。“初恋”をテーマにした『silent』が、全方向に刺さるラブストーリーだとしたら、本作はある一定の人に焦点を絞った作品だったように思う。たくさんの人を感動させようとか、共感を呼びたいとか、そんなことよりも、悩んでいる“あなた”に届けという祈りが伝わってくるような。

 本稿では、6月14日に『いちばんすきな花-ディレクターズカット版-』Blu-ray&DVD BOXが発売されるのを記念して、このドラマの魅力を改めて振り返っていきたいと思う。

“居場所”がひとつでもあれば、世界はちょっぴり生きやすくなる

 多部未華子×松下洸平×今田美桜×神尾楓珠がクアトロ主演を務めた『いちばんすきな花』。唯一心を許せた異性の友達に、結婚を機に“振られて”しまったゆくえ(多部未華子)、結婚を考えていた彼女を、彼女の男友達に奪われた椿(松下洸平)、友達になりたいだけなのに、異性から恋愛対象として意識されてしまう夜々(今田美桜)、友達の友達もみんな友達だと思っていたが、気づけば本音で話せる相手がいなかった紅葉(神尾楓珠)。

 このドラマに登場する4人は、みんながみんな心のどこかに寂しさを抱えながら生きている。そして、それを発散するのが得意ではない。誰かにぶつけられたらラクなのかもしれないが、彼らは相手に不快な想いをさせないように、「大丈夫」と強がって、笑って、気にしていないふりをする。そんなふうに生きていくうちに、気づけば本音を言うのが怖くなってしまった。

 彼らは、ずっと本音を隠して生きてきたからか、ピースがハマったときの勢いがすごかった。ひょんなことから集まっただけの4人が、椿の家でのおしゃべりを重ねるごとに、本音でぶつかることができる“特別な存在”へと変わっていく。恋人ではない、親友とはちょっとちがって、たとえるならば、この世界をともにサバイブしていく同志のような感じ。

 世の中は、何かと2人組になることを求めてくるけど、3人組だって4人組だっていい。“いちばんすきな人”は、ひとりじゃなくたっていいのだから。また、すべての場所で素の自分を見せる必要はない。たったひとつでも、本音で話すことができる居場所があれば、世界はちょっぴり生きやすくなる。普段は心を閉ざしているように見える4人が、椿の家で集まったときは本音をぶつけ合い、ゲラゲラと笑っているように。

 『いちばんすきな花』は、そんなメッセージを届けてくれる作品だった。

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