『すずめの戸締まり』に原菜乃華×松村北斗が与えたリアリティ 神木隆之介ら声優陣の魅力

『すずめの戸締まり』原菜乃華ら声優陣の魅力

 4月5日に『金曜ロードショー』(日本テレビ系)にて、『すずめの戸締まり』が本編ノーカットで地上波初放送される。同作は東日本大震災をテーマに新海誠監督が独自の解釈で死生観を描き出したそのセンスに加えて、美麗な背景描写と登場人物の心情を丁寧に描き出した新海監督の手腕が多くの共感を呼び、メガヒットを記録。初の地上波放送とあって、ファンからは多くの反響が寄せられている。本作は作品の重厚なテーマだけではなく、声優陣も作品に華を添えている。彼らの色とりどりで繊細な演技があったからこそ、登場人物はいきいきと輝いていた。

 本作は『君の名は。』『秒速5センチメートル』を手がけた新海誠監督による新作アニメーション映画で、2022年に公開されると、興行収入149.4億円を記録するなど、日本のみならず、国外でも大ヒットを記録。第73回ベルリン国際映画祭コンペティション部門に選出されたほか、第81回ゴールデングローブ賞ではアニメーション映画賞にノミネートされた。

 本作のヒロインである岩戸鈴芽は、ある日、旅の青年・宗像草太と出会う。彼に見覚えがあった鈴芽は彼を追いかけ、廃墟へと迷い込んだ先に不思議な扉があるのを見つける。だが、それは災いを呼び込む扉だった。鈴芽は謎の猫・ダイジンによって小さな椅子にされてしまった草太とともに扉を閉める旅に出かける。新海誠監督の作品では、俳優(ここではドラマや映画で主に活躍している人を指す)を起用するケースが多いが、今回も例外ではない。登場人物がいきいきと描かれる本作において、彼らの演技は大きな役割を担っていた。

 ヒロインの鈴芽を担当しているのは原菜乃華。オーディションにて1700人を超える中から選ばれた若手俳優で、今回がアニメ初挑戦となった。新海監督は彼女を選んだ理由について、「オーディションではいつも、この人の声と感情を二時間ずっと浴び続けていたいだろうかと考えます。菜乃華さんの声と芝居は、まさにそう思わせてくれるものでした」と明かしていた(※)。

 『真犯人フラグ』(日本テレビ系)では失踪してしまう女子高生役、『ナンバMG5』(フジテレビ系)では改造自転車を乗り回すヤンキー女子中学生など、当時からすでに多彩なバリエーションの役を演じていたが、本作で演じた鈴芽は等身大の女子高生。リアルな高校生の息遣いが原の演技からは聞こえてくるようだった。

 鈴芽は廃墟へと恐れずに突き進んでいく好奇心とともに、不用意に扉を開けてしまったことで日本が災害の危機にさらされた際には、自ら率先して止めに行く強い責任感も持ち合わせている。原は高校生ならではの瑞々しさや勢いだけで突き進んでいく無鉄砲さを声に乗せることで、鈴芽の輪郭をくっきりと浮かび上がらせていた。

 その後、原は映画『ミステリと言う勿れ』や『恋わずらいのエリー』などの作品に出演し、ブレイク街道を突き進んでいるが、『すずめの戸締まり』は大きなターニングポイントになったのではないだろうか。

 一方、「閉じ師」として日本各地の扉を閉めるために各地を旅している草太は、見た目からは堅物な印象も受けるが、実は誰よりも正義感が強く、礼儀正しい好青年。鈴芽に対して見せる優しさにはドキリとさせられる。そんな草太を担当しているのは声優初挑戦となった松村北斗(SixTONES)。

 『ノッキンオン・ロックドドア』(テレビ朝日系)や映画『ライアー×ライアー』、『夜明けのすべて』など多くの作品で主演を務めている松村だが、本作では彼の美声がこれでもかとばかりに発揮されている。

 草太は見た目とは裏腹に心の内には熱い思いも秘めており、松村の美しい声色が草太の二面性を伝えていた。今作がアニメ初出演ということだが、それを感じさせないほどに松村の落ち着いた声は作品に重層的な深みを与えている。原と松村、2人による飾らない演技は、ファンタジー要素を多分に含んだ作品において、リアリティを生んでいたように思う。

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