『さよならマエストロ』西島秀俊と芦田愛菜に訪れた和解の時 喪失と再生重ねる作劇の妙

『さよならマエストロ』俊平と響に和解の時

「マエストロが晴見に来て俺たちと出会ってくれたこと、それも運命なんじゃないかって思うんだよね」

 ベートーヴェンの「運命」で幕を開けた本作はクライマックスに差しかかった。大きな円を描くようにそれまでの全てが有機的につながり、一つのシンフォニーを奏でる。ドイツで生まれたメロディに地方都市の市民オーケストラが音を重ねて、新たな生命を吹き込むように。長い時間を経て響と俊平は互いを許し合い、抱擁を交わした。鳴りやんでいた父と娘のハーモニーがふたたび響きはじめた。

さよならマエストロ~父と私のアパッシオナート~

 父と娘の葛藤を繊細なタッチで描写する『さよならマエストロ』は、ロジカルな筋立て以上に、音楽に身をゆだねるように自然に湧き出す感情を味わうことでその魅力が鮮明になる。長台詞に乗せて心の想いを響かせた芦田愛菜と、無防備な自身をさらけ出した西島秀俊。親子の情愛という普遍的な感情を正面から表現できたのは、演じる役者への信頼あってこそだろう。

さよならマエストロ~父と私のアパッシオナート~

 シュナイダーの手紙は俊平を思いやる言葉であふれていた。シュナイダーにとって俊平は失われた音楽への情熱を灯してくれた存在であり、俊平が戻ってくる日のためにシュナイダーは帰る場所を用意したのではないだろうか。「おかえり」の言葉が胸に沁みる『さよならマエストロ』は次週いよいよ最終楽章を迎える。

■放送情報
日曜劇場『さよならマエストロ~父と私のアパッシオナート~』
TBS系にて、毎週日曜21:00〜21:54放送
出演:西島秀俊、芦田愛菜、宮沢氷魚、新木優子、當真あみ、佐藤緋美、久間田琳加、大西利空、石田ゆり子、淵上泰史、津田寛治、満島真之介、玉山鉄二、西田敏行
脚本:大島里美
音楽:菅野祐悟
主題歌:アイナ・ジ・エンド「宝者」(avex trax)
撮影監督:神田創
音楽監修:広上淳一(東京音楽大学)
全面協力:東京音楽大学
企画プロデュース:東仲恵吾
プロデュース:益田千愛
演出:坪井敏雄、富田和成、石井康晴
©TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/sayonaramaestro_tbs/

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる