チェ・ウシク×ソン・ソックの演技を堪能 『殺人者のパラドックス』が問いかける善悪の差

『殺人者のパラドックス』が問いかける善悪

 平凡な大学生がひょんなことから殺人犯に……。『殺人者のパラドックス』がNetflixで配信中だ。配信開始から1週間が経った今もランキング上位をキープしている(2024年2月16日現在)。韓国の若手俳優の代表と称されるチェ・ウシクと、遅咲きながら確かな実力を証明して人気急上昇した旬の俳優ソン・ソックが主演を務めることで注目を浴び、ファンの期待を背負った作品である。

 主人公は代わり映えしない毎日に飽き飽きしている大学生のイ・タン(チェ・ウシク)。うんざりする日々から逃げ出そうと、コンビニでアルバイトをしながらワーキングホリデーを使いカナダへ行くことを目標としていた。そんなある日、意図せずに殺人を犯してしまい恐怖と罪悪感に襲われる中で2人、3人と立て続けに殺してしまう。しかもタンが殺す相手は共通点があることが分かる。ところが、運がいいのか能力なのか、なぜか証拠が都合よく消えてしまうため捜査は難航しタンは捕まらずにいた。勘のいい刑事チャン・ナムガム(ソン・ソック)は連続して起こる殺人事件にタンが関与しているとにらみ追うことになる。

 『パラサイト 半地下の家族』の寄生虫家族の長男役でグローバル圏にも名を知らしめたチェ・ウシク。『その年、私たちは』では“ロコキング(ロマンスコメディのキング)”とも呼ばれ、作品ごとにキャラクターの魅力を発揮してきた。序盤では、どこにでもいる大学生を演じているが、殺人者となったタンのひょう変ぶりは鳥肌もの。外から見たら普通の人と何も変わらないが、人を殺す瞬間だけ何かに取り憑かれたように人が激変する。徐々に変わっていく風ぼうに合わせた表情の違いにもぞっとさせられ、同一人物のイ・タンにはとても見えないのだ。まさにチェ・ウシクにしかできない演技を堪能できる作品とも言えよう。

 さらには、かもし出す雰囲気、視線や息の使い方だけでも物語るソン・ソックの演技にも酔いしれてしまう。『犯罪都市 THE ROUNDUP』や『私の解放日誌』、『恋愛の抜けたロマンス』などで凶悪な犯罪者、ミステリアスで寡黙な男、草食系男子などを演じてきたソン・クックのこれまでの全てが詰まったのが刑事チャン・ナムガム役だと思わせるほど仕上がっているので、ぜひ観ていただきたい。また、後半に登場する元刑事の謎の男ソン・チョン役のイ・ヒジュンも迫力満点。間違いなく俳優たちの気概に圧倒されることだろう。

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