山﨑賢人が胸を熱くさせる! 実写版『ゴールデンカムイ』で見事に立ち上げた杉元像

『ゴールデンカムイ』山﨑賢人に熱くなる

 これらは広く知られている事実だが、あえて列挙してみた。すべての作品に共通していえるのは、マンガ作品を原作としていること。これだけだ。各作品のジャンルも、山﨑が演じるキャラクターのタイプも、その一つひとつはまったく違う。二次元のマンガの世界から飛び出してきたような彼特有の佇まいが、キャラクターのイメージにぴったりハマった。というのが、『L♡DK』の頃の印象だ。

 しかしこれも数を重ねると、俳優としての大きな糧(=武器)になる。私たちの生きる現実からすると、マンガの世界は非常にフィクショナルだ。当然ながら演じる俳優には、このフィクショナルな物語に適した振る舞いが求められる。セリフの発し方だってそうだ。ここまでマンガ作品原作の作品を積み重ねてきた山﨑が『ゴールデンカムイ』で主演するのはたしかに「またか!」だが、私の反応としては「おっ(間違いない)!」なのであり、「またか(当然だろう)!」なのである。

 実際にフタを開けてみれば、山﨑は予想以上に素晴らしい杉元像を立ち上げている。戦闘シーンにおける彼の凄みのある表情と叫びには、何度も身体が強張った。『キングダム』シリーズで培ったものは大きいのだろう。つねに全力というわけではなく、技術なのかセンスなのか、出力すべき瞬間の力加減を細かくコントロールしているように感じる。アクションにしたってそうだ。本作の戦闘シーンは、『キングダム』ほど現実離れしていない。俊敏だがどこか泥くさい山﨑の身体の扱いが、「不死身の杉元」を生々しく生み出している。必殺技などはないが、それでも目を奪われるのは、山﨑の一挙手一投足が杉元の“生への執着”を体現しているからだろう。必死な人間というのは、美しいものなのだ。

 そしてもう一点、山﨑が立ち上げた杉元像の美点を挙げておきたい。原作の『ゴールデンカムイ』はつねにシリアスな作品というわけではない。シーンによってはギャグ要素もある。これをどれくらい実写化では取り入れるのかが気になっていた。実際、それなりに取り入れられている。だが、山﨑は積極的に笑いを取りに行くような大袈裟なことはせず、ただ各シーンの中での要請に従ってサラリと表現しているのみ。笑えるシーンというよりは、ほっこりとなるシーンとして成立している。演出に拠るところも大きいのだろうが、山﨑の控えめなギャグ表現によって作品はさらなるリアリティを獲得し、シリアスなシーンと対置されることで緩急を生み出しているのだ。

 ここにまた、俳優・山﨑賢人の新たな旅がはじまった。長く険しいものになるのだろうが、彼が歩みを止めないかぎり、私たちの胸の熱さは消えない。

■公開情報
『ゴールデンカムイ』
全国公開中
出演:山﨑賢人、山田杏奈、眞栄田郷敦、工藤阿須加、栁俊太郎、泉澤祐希、矢本悠馬、大谷亮平、勝矢、高畑充希、木場勝己、大方斐紗子、秋辺デボ、マキタスポーツ、玉木宏、舘ひろし
原作:野田サトル『ゴールデンカムイ』(集英社ヤングジャンプ コミックス刊)
監督:久保茂昭
脚本:黒岩勉
音楽:やまだ豊
アイヌ監修:中川裕、秋辺デボ
製作幹事:WOWOW・集英社
制作プロダクション:CREDEUS
配給:東宝
©野田サトル/集英社 ©2024映画「ゴールデンカムイ」製作委員会
公式サイト:kamuy-movie.com
公式X(旧Twitter):@kamuy_movie
公式Instagram:@kamuy_movie

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