『ゴールデンカムイ』実写版成功へのポイント 『HiGH&LOW』久保茂昭監督だから安心?
映画『ゴールデンカムイ』の情報が発表された。
本作は、2014年から2022年にかけて『週刊ヤングジャンプ』(集英社)で連載された野田サトルの同盟漫画を映画化した作品だ。舞台は明治末期の北海道。日露戦争から帰還した元陸軍兵の杉元佐一(山﨑賢人)がアイヌの少女・アシリパ(山田杏奈)と共に、アイヌが秘蔵していた金塊を探す冒険活劇となっている。
漫画では複数の勢力の金塊争奪戦が展開されるとともに、大自然の中で展開される野生動物との戦いや、仕留めた動物をその場で調理して食べるグルメ漫画的な要素もある。また、金塊の地図となる入れ墨を持った囚人たちの多くは猟奇犯罪者で、彼らの奇人変人っぷりを楽しむサイコサスペンス的な面白さもある。同時にアイヌ文化について学ぶことができる歴史漫画としての側面もあるため、「和風闇鍋ウエスタン」というキャッチコピーにふさわしい、何でもありの痛快娯楽漫画となっている。
また、本作には映画のオマージュが散りばめられているのだが、物語を貫く荒々しいエネルギーは、昭和の日本映画を思わせるものがあった。そのため、実写映画化されると聞いた時は、深作欣二が生き返って監督しなければ、この荒々しい世界は映像化できないのではないかと思っていたが、久保茂昭が撮ると知った時は「その手があったか!」と納得した。
久保はEXILEなどのMVで高く評価された映像作家で、EXILE HIROが企画したプロジェクト『HiGH&LOW』シリーズの映画監督として知られている。複数のグループが激しい抗争を繰り広げる『HiGH&LOW』は新しい時代のアクション映画として高く評価された。現在の日本映画界で、もっとも華やかで力強い集団戦闘のアクションを撮ることができる監督と言って間違いないだろう。
ダンスパフォーマンスの延長線上にある『HiGH&LOW』のスタイリッシュなアクションシーンと大自然の中で展開される『ゴールデンカムイ』の血生臭い戦いは、ともすれば真逆とも言えるが、だからこそ面白い化学変化が見られるのではないかと思う。その意味でも、久保が監督することは予想外ではあったが「これしかない」と言える起用である。
一方、脚本は黒岩勉。音楽はやまだ豊、制作プロダクションはCREDEUSという映画『キングダム』のチームが担当。そして、主人公の杉元には『キングダム』の主人公・信を演じた山﨑賢人が起用された。佐藤信介が監督する『キングダム』は『ゴールデンカムイ』と同じ『週刊ヤングジャンプ』で連載されている原泰久の歴史漫画を映画化したもので、劇場映画が3作作られる大ヒットシリーズとなっている。
おそらく劇場版『ゴールデンカムイ』には、『キングダム』で生み出された長編漫画を実写映画化するためのノウハウが注ぎこまれているのではないかと思う。そこに久保の、徹底的に作り込まれたMV的なビジュアルとアクションが加わることで、これまでにない冒険活劇が生まれるのではないかと期待している。