『大奥』小芝風花が倫子の悲痛な胸の内を熱演 亀梨和也の“目の演技”が光る

『大奥』亀梨和也の“目の演技”が光る

 だが、倫子は心だけは自由であろうとした。袿も羽織らず、真っ白な着物で家治の前に現れ、決して大奥の“しきたり”には染まらないという意思を示す。彼女が強くあれたのは、心の中に信通がいたから。ここから出ていつかは会えるという希望があったからである。だが、その希望もやがては打ち砕かれる。和歌を詠むふりをして文を認め、信通に助けを求める倫子だったが、返ってきたのは自身の姉と夫婦になったゆえ、迎えにはいけないという返事だった。公家の姫でありながら、松島やお知保にも食ってかかるほどの度胸がある倫子。一方で、脆さも抱えた彼女の悲痛な胸の内を小芝が熱演し、観る人の心を揺らす。倫子が置かれた状況はあまりにも過酷で辛い。

大奥

 そんな中で希望となってくれるのが、倫子が幼き頃に一目見て「冷たく蛇のような目をしていた」と感じた家治の静かな優しさだ。己に逆らう家臣を容赦無く切り捨てる冷酷な人物かと思いきや、決して心を持たぬ者ではないことが徐々にわかってくる。信通の文を倫子の目の前で破り捨てたのも、彼女が真実を知って傷つかないようにするため。「抱く気にならない」と寝所にきて倫子を拒んだのも、彼女がそれを望んでいないことに気づいたからだろう。寡黙で何を考えているかわからない家治の心の内を表すのが亀梨和也の目の演技。ちょっとした視線の運びで、家治が何を見て、何を考え、どういう判断を下したのかを想像させる。そんな家治の目が老中の田沼意次(安田顕)を前に一瞬だけ狼狽したように見えた。将軍である家治の心をも意次が支配している理由とは一体何なのか。倫子と顔馴染みらしき松平定信(宮舘涼太)も一見穏やかだが腹の中に何かを隠し持っている節があり、女たちのみならず、男たちの水面下でうごめく権力闘争にも注目したいところだ。

大奥

 度重なる天変地異や凶作、疫病で景気が悪化し、苦しい生活に耐えかねた民による暴動が各地で起きていたこの時代はどこか現代にも近しいものがある。そんな中で人々の心が疲弊し、自分のことで精一杯で他人に心を配る余裕がなくなるのは当たり前だ。でも、だからこそ、ちょっとした誰かの優しさに心が温まり、誰かと心を交わせた瞬間の喜びが増すというもの。愛憎渦巻く大奥の中で倫子と家治の関係は希望となってくれるのではないだろうか。

■放送情報
木曜劇場『大奥』
フジテレビ系にて、毎週木曜22:00~22:54放送
出演:小芝風花、亀梨和也、西野七瀬、森川葵、宮舘涼太、栗山千明、安田顕ほか
脚本:大北はるか
企画:安永英樹
プロデュース:和佐野健一、清家優輝、出井龍之介、庄島智之
演出:兼﨑涼介、林徹、二宮崇、柏木宏紀
音楽:桶狭間ありさ
制作協力:ファインエンターテインメント
制作著作:フジテレビジョン、東映
©︎フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/ohoku2024/
公式X(旧Twitter):@ohoku_fujitv
公式Instagram:@ohoku_fujitv 

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