『大奥』小芝風花が倫子の悲痛な胸の内を熱演 亀梨和也の“目の演技”が光る
幼い頃、ふとテレビに目をやると着物姿の美しい女性たちが取っ組み合いの喧嘩をしていた。それが衝撃的かつ刺激的で、思わず画面に釘付けになったのを覚えている。
あの時、テレビで流れていたフジテレビの時代劇『大奥』が令和のこの時代に帰ってきた。菅野美穂や松下由樹、内山理名など、名だたる俳優からバトンを引き継いだ小芝風花が主演を務め、江戸城の大奥という小さくとも濃縮された“女の社会”に身を投じる。
連ドラとしては2005年に放送された『大奥〜華の乱〜』以来、約20年ぶりの復活にあたり、「『大奥』史上、最も切なくて美しいラブストーリー」と謳った本作。第1話は、謳い文句に違わぬ主人公・五十宮倫子(小芝風花)の悲恋を情緒たっぷりに描きつつも、本シリーズが紡いできた歴史の延長線上にあることを思わせた。
約260年続いた江戸時代の中で、今回フォーカスされるのは第10代将軍・家治(亀梨和也)の時代。彼がまだ征夷大将軍に就任する少し前、公家の姫である倫子が正室として嫁いでくる。しかし、それは倫子の本意ではなかった。彼女には他に信通(鈴木仁)という想い人がいたのである。幼なじみである2人の絆は深く、信通もまた倫子のことを憎からず思っているように見えた。
後ろ髪を引かれる思いで信通と別れ、付き人のお品(西野七瀬)とともに大奥入りを果たした倫子。まもなく将軍となった家治の寵愛を得ようとする女たちの熾烈な戦いが勃発し、彼女は否応なく巻き込まれていくこととなる。大奥で最も権力を持つのは、将軍の御台所ではなく、将軍の子、中でも次の将軍となりうる男児を成した者なのだ。そんな女の園を束ねる大奥総取締・松島(栗山千明)と彼女の息がかかるお知保(森川葵)が今作ではヒール役となり、容赦ない大奥の洗礼を倫子に浴びせていく。
お品が手足の自由を奪われて納戸に監禁されたり、倫子が信通に書いた文をお知保に奪われ、取り返そうとするなど、過去の作品からエッセンスを引き継いだ激しい女のバトルは健在。それとは無縁な令和“スリーアミーゴス”(山村紅葉/小林きな子/ハシヤスメ・アツコ)の一瞬気が抜けるゆるいやりとりは、「美味でございます~」というおなじみのセリフはなくとも懐かしい。また何より、本シリーズの顔ともいえる浅野ゆう子の重厚感あるナレーションが、一度入ったら簡単には出られない、牢獄ともいえる大奥の世界へと誘ってくれる。