『REBEL MOON — パート1』は驚きの内容に 面白さは『スター・ウォーズ』続三部作以上?
ハリウッドで多くのヒット作を連発してきたザック・スナイダー。ワーナー・ブラザースによるDCコミックス原作映画の中心となるクリエイターとしても活躍したように、その作品や作家性が注目の的になってきた。
DC作品から離脱した現在、スナイダー監督は、自身の製作スタジオ「ザ・ストーン・クアリー」とともにNetflixと契約を結び、配信用の長編映画を製作している状況だ。その第一弾として多くの視聴数を稼ぎ出したのが、『アーミー・オブ・ザ・デッド』(2021年)だった。そして、続いてリリースされたNetflix配信映画が、『REBEL MOON — パート1:炎の子』である。
そんな本作『REBEL MOON — パート1:炎の子』は、驚かざるを得ない内容だった。SFとファンタジーが融合した世界で、宇宙船やビーム砲が飛び交い、光線銃や光る刃で戦うキャラクターが登場する映像が、『スター・ウォーズ』シリーズの世界観に非常に似ているのである。予告編を目にした人のなかで、『スター・ウォーズ』関連作だと誤解してしまったというケースも少なくないのではないだろうか。ここでは、そんな本作で何が描かれているのかを考えていきたい。
本作が『スター・ウォーズ』シリーズに似ているということについては、もちろんザック・スナイダー監督も意識しているし、オマージュがあると公言もしている。考えてみれば、『スター・ウォーズ』シリーズ独自のキャラクターや設定以外の部分には、確かに著作権はないように感じられる。であれば、“『スター・ウォーズ』風”の大作を製作するのは、そもそも可能だったのだ。しかし、莫大な製作費がかかる超大作映画において、近年わざわざそこに手を出そうとするスタジオがなかったということである。
もともとスナイダー監督は、公式の『スター・ウォーズ』の新作企画を以前から温めていたのだという。それは惜しくも実現に至ることはなかったが、おそらくそのときのアイデアが使用されている可能性があり、そうであれば本作は、本質的に“スナイダー版のアンオフィシャルな『スター・ウォーズ』”なのだと観ることもできそうだ。しかもNetflixであるだけに、より過激な表現にも踏み込んでいる。
周知の通り、実際に完成した本物の『スター・ウォーズ』続三部作(エピソード7、8、9)の出来は、お世辞にも良いものだったとはいえない。その詳細は、以前記事で書いた通りだ(【ネタバレあり】『スター・ウォーズ』続3部作とは何だったのか 小野寺系が“失敗の理由”を解説)。それを踏まえた上で、この続三部作と比較すると、『REBEL MOON — パート1:炎の子』の方が面白いと感じられるのである。
「REBEL(レベル)」とは、「反乱者」のことを指す。『七人の侍』(1954年)からインスパイアされたという本作は、銀河の片隅にある惑星の平和な村に、巨大な帝国「マザーワールド」の兵たちが現れて侵略を始め、不当に食料を搾取しようとするといった、いかにも『七人の侍』の宇宙版といった設定。その村に潜伏していた、元兵士の女性コラ(ソフィア・ブテラ)は、農民たちを守るために志を同じくする「レベルズ」をまとめ上げ、冷血な執行官(エド・スクライン)率いるマザーワールドの兵と戦うことになる。
とくに『スター・ウォーズ』シリーズの第1作となった『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』(1977年)が、黒澤明監督の映画に多大な影響を受けていて、『隠し砦の三悪人』(1958年)のプロットを参考にしていることを考えると、ザック版であるところの本作が『七人の侍』を参考にしていることは、ややオリジナリティには欠けるが、全く不自然なことではない。