広げた大風呂敷を畳めるのか? 『REBEL MOON』で爆発したザック・スナイダーの剛腕

『REBEL MOON』の問題点

 頑張れ、ザック・スナイダー。というわけでNetflixが放つSF超大作『REBEL MOON — パート1:炎の子』(2023年)である。監督はザック・スナイダーだが……とりあえずザックさん、YouはShockである。というのも、観終わったあとに、ある意味で今年一番「これ、続きは大丈夫なんですか?」となったからである。

 本作のあらすじは『七人の侍』(1954年)だ。この点は監督も公言している。腕に覚えのあるメンバーが、外道どもの脅威に曝された農民たちを守るべく戦い、さらに彼ら彼女らを鍛えあげていく。今回は『パート1』ということで、その「腕に覚えのあるメンバー」を集めるのがメインになるのだが……1つだけ大きな問題がある。敵が野武士だった『七人の侍』と違って、こっちの敵は『スター・ウォーズ』(1977年~)の帝国軍をさらにナチスに寄せたような情け無用の残虐軍隊なのだ。レーザー銃で武装したうえ、数も多く、さらに惑星を直で滅ぼせるような戦艦も所持している。戦艦の司令官は1人触手プレイを楽しむ変態だが、それはさておき、あまりにも強大すぎる。

 対して農民たちは、マジで農民である。これは実際に観てもらわないと分からないのだが、たとえば『アバター』(2009年)のパンドラの人々のような、身体能力で人間に勝っているとか、地の利があるとか、そういうのが一切ない。というか、SF映画の登場人物にすら見えず、どちらかというと西部劇の住人がそのまま出てきた感じだ(これは昔のアメリカのド田舎にナチスが攻めてきたら? という想像図の映像化とも言えるかもしれない)。「この人たちがどれだけ力を合わせても、超巨大宇宙戦艦には勝てねーぞ」と思うこと必至である。

 そして「腕に覚えのあるメンバー」もなかなか不安だ。クールな女戦士、胡散臭い人、動物と話せるワイルドな王子、クールな女戦士(被った!)、やさぐれた軍師、革命軍を率いる男……などなど、確かに個としては強いが、「この人たちがどれだけ力を合わせても、超巨大宇宙戦艦には勝てねーぞ」と思うこと必至である(2回目)。

 正直テンプレ通りの仲間集めパートが終わり、「大丈夫かな?」と思いながら観ていたら、いきなり「『パート1』とはいえ、派手な見せ場作んねぇとヤバいぜ」とばかりに、やや唐突気味にクライマックスへ。ここでザック・スナイダーの剛腕が爆発する。中規模くらいの宇宙船vs人間という、ちょっとどうするのか分からない対戦カードが組まれるのだが、「そうはならんやろ」という無茶な戦術がまかり通ってしまう。ザックさんの悪い癖、つまりド迫力映像で無茶理論を誤魔化そうとするも、あまりに理屈がムチャクチャで誤魔化しきれないパターンである。そして「おいおい、大丈夫かよ」という気持ちを残したままエンディング&次回予告へ。そこでは農民たちが藁人形に刃物を投げて、指導者たちが「よし、いい調子だ」と褒めていた(繰り返すが、相手は宇宙戦艦である)。大丈夫なんでしょうか、ザックさん。

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