『ブギウギ』は東京大空襲をどう描く? 映画、ドラマで描かれた戦時下の日本を振り返る
たとえば現在公開中の『ゴジラ-1.0』には、焼け野原となった東京に主人公・敷島浩一(神木隆之介)が帰ってくるシーンが収められているが、実際はこれよりももっと酷かったはず。たびたび映画やドラマで目にしてきた無惨な光景ではあるものの、現実にはいまの私たちの想像を遥かに凌駕するものだったのだ。
『ゴジラ-1.0』山崎貴の“本領発揮”はまだ先に 虚構vs現実を踏襲したことで生まれた齟齬
山崎貴監督の『ゴジラ-1.0』は、今、日本で新作ゴジラを作り、打ち勝つことの困難さを思い知らされる。なにせ2023年は、ゴジラの…
佐田啓二と岸惠子が共演したメロドラマの傑作映画『君の名は』は、3月10日以降の東京での大きな空襲の夜から物語がスタートする作品だ。終戦から10年も経たないうちに製作されたものとあって、当時の空気感をもっとも丁寧に取り込んだ映画かもしれない。私たちはあの当時の現実を知り、空気に触れ、学ぶ必要がある。エンターテインメント内のできごととして描くのだからしかたないのかもしれないが、こういった大きな悲劇はドラマのトリガーとして安易に扱われがちな側面があると思う。いや、事実そうだろう。戦争映画でもないかぎり、それはごく短い、ひとつのエピソードとしてしか扱われないことがほとんどだ。フィクション内で物語を展開させるための装置としてや、私たちが復興し成長するためにあの悲惨な過去があったわけではない。
そこには物語の登場人物として語られることのなかった、多くの人間の人生があったのだ。この時代を生きる私たち視聴者がせめてできることは、物語に対するフォーカスを広げ、語られることのなかった誰かの人生を考えることだろう。
『ブギウギ』第13週のタイトルは「今がいっちゃん幸せや」である。この「今」や「幸せ」を、戦争は一瞬にして破壊する。東京大空襲は紛れもない虐殺であり、現在でも海の向こうでは虐殺が行われている。物語のいちエピソードを通して観客/視聴者を“いま=この現実”に向き合わさせるのが、エンターテインメントの役割でもあるはずなのだ。
■放送情報
NHK連続テレビ小説『ブギウギ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:趣里、水上恒司、草彅剛、蒼井優、菊地凛子、水川あさみ、柳葉敏郎ほか
脚本:足立紳、櫻井剛
制作統括:福岡利武、櫻井壮一
プロデューサー:橋爪國臣
演出:福井充広、鈴木航、二見大輔、泉並敬眞、盆子原誠ほか
写真提供=NHK