『首』好スタート、北米では『ゴジラ-1.0』も公開 日本だけじゃない日本映画のマーケット

日本映画のマーケットは日本だけじゃない

 11月第4週の動員ランキングは、2019年2月に公開されて興収37.6億円のサプライズヒットを記録した『翔んで埼玉』の続編、『翔んで埼玉 ~琵琶湖より愛をこめて~』がオープニング3日間で動員29万2300人、興収4億1500万円をあげて初登場1位となった、祝日だった初日から4日間の累計成績は動員44万4500人、興収6億3000万円。スポーツ紙などの報道では「公開初週末の成績が前作比160.9%」という小数点まで入れた一見厳密そうな数字が躍っていたが、これは配給元から提供された土日2日間の興収比だろうか。金、土、日の3日間の興収比で比較すると前作比約125%。イレギュラーなかたちで前作のオープニング3日間と祝日も加えた今作のオープニング4日間で比較すると約190%。いずれにせよ好調な成績ではあるが、作品の特性やチャームポイントがすっかり周知されている今作では、前作のような口コミによる2週目以降の広がりはそこまで期待できず、初動型の興行となる可能性もある。

 3位に初登場したのは、2017年10月に公開された『アウトレイジ 最終章』以来6年ぶりの北野武監督作『首』。オープニング3日間の動員は17万5200人、興収は2億6100万円。初日から4日間の累計成績は動員26万3000人、興収3億9500万円。まだ多くの日本映画が土曜公開だった頃の『アウトレイジ 最終章』は公開初週の土日2日間で興収3億5200万円をあげていたので、それとくらべると目減りはしているものの、久々の監督作であること、『アウトレイジ』のようなシリーズ作品ではないこと、そして観客層が限定されがちな時代劇であることをふまえると、十分に健闘していると言えるだろう。作品の評判も良好なので、こちらは時代劇であることで当初は敬遠していた観客の口コミによる広がりにも期待できそうだ。そして言うまでもなく、現在の日本映画界において数少ない世界的名匠の評価を確立している監督である北野作品のマーケットは日本だけではない。

 日本映画の海外マーケットでの展開という点では、12月には大きなトピックが二つある。一つは、本日12月1日、『ゴジラ-1.0』がToho Internationalの配給によって北米で1000館規模での拡大公開されること。アニメーション作品が圧倒的にリードしてきた日本映画の海外展開だが、今回の『ゴジラ-1.0』は批評家からの事前の評価は極めて高く、実写日本映画としてどこまでの成績が残せるかに注目したい。

 もう一つ、宮﨑駿監督の『君たちはどう生きるか』の北米での拡大公開も、その翌週の12月8日にいよいよ始まる。こちらは既に韓国やフランスといった宮﨑駿ファンの多い国でヒットを記録していて、映画祭や限定公開のスクリーンで北米の観客からも高い支持を得ているが、これまでのジブリ作品の記録をどこまで塗り替えることができるだろうか?

■公開情報
『首』
全国公開中
原作:北野武『首』(KADOKAWA刊)
監督・脚本:北野武
出演:ビートたけし、西島秀俊、加瀬亮、中村獅童、木村祐一、遠藤憲一、勝村政信、寺島進、桐谷健太、浅野忠信、大森南朋、六平直政、大竹まこと、津田寛治、荒川良々、寛一郎、副島淳、小林薫、岸部一徳
製作・配給:KADOKAWA
©︎2023KADOKAWA ©︎T.N GON Co.,Ltd

『今週の映画ランキング』(興行通信社):https://www.kogyotsushin.com/archives/weekend/ 

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