『ブギウギ』辛口な初恋の終わりが意味するもの 「センチメンタル・ダイナ」の切ない響き

『ブギウギ』初恋の終わりが意味するもの

 女性ばかりの梅丸少女歌劇団(USK)で育った福来スズ子(趣里)と秋山美月(伊原六花)が、男性社会で揉まれながら、それぞれの人生の選択をする。朝ドラことNHK連続テレビ小説『ブギウギ』第7週「義理と恋とワテ」では、恋を知ることで、スズ子と秋山に変化が起こった。それは共に上京したふたりの分岐点。それぞれ道は違うけれど、ふたりとも恋を選ばない。恋を通して自分自身のやりたいことを自覚するところが印象的である。

 大阪の梅丸少女歌劇団でも東京の梅丸楽劇団(UGD)でも、スズ子と秋山はひたむきにレッスンと本番の日々を過ごしていたが、スズ子は松永(新納慎也)に額にキスをされすっかり舞い上がり、秋山はダンサーの中山(小栗基裕)から公私共にパートナーになってほしいと迫られていた。

 朝ドラでヒロインの初恋は通過儀礼のひとつであり、実らないことが多いものとはいえ、それにしても『ブギウギ』の初恋の終わりは辛口だ。二十代を過ぎ社会人になってからの恋であるからともいえるだろうが、スズ子と秋山の恋はビジネスと絡んで、辛いうえにちょっと生臭い。ドラマではその生臭さをデオドラントしているように感じるが、そのニオイは消しきれない。

 でもスズ子の初恋の味は甘いチョコレート。優しく紳士的な松永は、リラックスできるとチョコレートをいつもくれた。チョコの味が恋の味と、恋多きリリー白川(清水くるみ)が言っていたと聞いたスズ子は意識してしまう。額にキスまでされて、彼の好意を期待するスズ子に、松永が秘密の話を持ちかける。交際の申し込みではなく、移籍の話だった。

 恋で視界が曇っているスズ子は松永の言われるがままになり、さらに、実家のツヤ(水川あさみ)の治療費が入用になることなども重なって、大問題に発展。義理と人情を欠いた行為であると梅丸上層部は激怒し、移籍を阻む。

 松永と共に逃げたいとスズ子は思い詰めるが、松永には恋人がいた(アメリカに)。日本と比べて、欧米では男女も開放的に接するので、松永にとっては単なる親愛の情を、恋愛免疫のないスズ子が勘違いしてしまっただけというひとり相撲だった。

 松永には悪気なく、梅丸よりも可能性のある日宝に移るにあたって、ポテンシャルを感じるスズ子も一緒に連れていきたいと思っただけのようだ。もともと彼が大阪で彼女の才能を認めたのだから当然でもある。だが、決して彼女の恋ごころにつけこむ意図はなかったとしても、初心なスズ子の気持ちを軽い気持ちで、巧みにコントロールしていたようにも見えかねない。彼のような態度がこの時代のセクシャルハラスメントの土壌を広げたともとれるエピソードであった。少なくとも、妙齢の女性を子供扱いしていた感じは否めない。

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