杉咲花に聞く、俳優として走り続けられる理由　「自分の人生には表現する時間が必要」

根底にある“目の前にいる誰かと響き合いたい”という感覚

ーーいままで演じてきた役柄の中で、一番難しかった役はなんですか？

杉咲：ええ、難しい。なんでしょう……。いま思い浮かぶ作品は、最近まで撮影していた『52ヘルツのクジラたち』で演じた役でしょうか。正直、作品を撮っている間は、いまが一番難しくて大変で、苦しいんじゃないかという気持ちがあるんです。そういった“安心できない感覚”があるからこそ、走り続けられるところもある気がします。

ーーデビューから15年以上、数々の主演やヒロインという大役を担う中で培った“演技術”みたいなものもありそうな気がします。

杉咲：それが、ないんですよね。ずっと不安ですし、張り詰めた緊張があります。ですが最近になって、そういった恐怖を抱えているからこそ、本番中に起こった事象を純粋に受け止めることができるのかもしれないと思うようになってきました。

ーーお芝居自体はもちろんですけど、主演のような大きなポジションになると、視聴率や興行成績みたいな“結果”も求められるようになってきますしね。

杉咲：そのプレッシャーは常にあります。ですが、私は何よりも、どれだけ人と深く関わることができるかが重要だと思っていて。それは共演者だけではなく、スタッフとして携わる作り手の方たちとの関係性においてもなのですが、やっぱり現場にいる人間がときめいたことや感動したことは、画に映し出されるものだと思いますし、その感覚をどれだけ共有しながら深めていけるかは、現場に立つ時間の長い主演の存在も大きいと思うんです。だからこそ、人間として成長していきたい気持ちが強くあります。

ーー長く続けられている根底には、やっぱりお芝居が好きという思いがあるからなのでしょうか？

杉咲：そうですね……。屈託なく“好き”と言えるほどシンプルな存在ではないのですが、自分以外の誰かになって、何かを伝えたり表現したりする時間が、自分の人生には必要な気がしています。

ーー“ないと生きていけない”もの、みたいな感覚なんですかね。

杉咲：たしかに、お芝居がない人生はあまり考えられないかもしれません。ただ根底にあるのは、“目の前にいる誰かと響き合いたい”という感覚なんです。それはお芝居をしていないときにも言えることで、スタッフさんをはじめ関わる人がたくさんいる仕事なので、その積み重ねでもあると思っていて。その中で、カメラに捉えられていて、光を当てていただいて、緊張状態に身を置きながら、それでも自由でいようとする瞬間というのは、何かこう、言葉にできないような、たまらない感覚があります。

ーー今回共演された永瀬廉さんや北村匠海さんもそうですが、杉咲さんの世代には大活躍をされている方がたくさんいますよね。そういう同世代の方たちを意識することはあるんですか？

杉咲：意識はありますし、眩しく感じています。ですが、どこまでいっても自分は自分であるということを受け入れないと立っていられなかったりするので。他者を羨望して、自分を肯定して……の繰り返しです。

ーーでもその“自分らしさ”は、同世代の俳優さんの中で杉咲さんが築いている独自のポジションにつながっているような気がします。

杉咲：そうでしょうか。だとしたらとても嬉しいです。仕事の場でもそうなのですが、私は、日々を営むなかで感じる悔しさや怒り、幸福などに対して、どんなときも素直でいたい気持ちがあります。そういう感覚は、演じるときにもなにか地続きで作用するものがある気がしているんです。だからこそ、この先も人としての自分を更新していきたいです。

■公開情報
『法廷遊戯』
全国公開中
出演：永瀬廉、杉咲花、北村匠海、戸塚純貴、黒沢あすか、倉野章子、やべけんじ、タモト清嵐、柄本明、生瀬勝久、筒井道隆、大森南朋
原作：五十嵐律人『法廷遊戯』（講談社文庫）
監督：深川栄洋
脚本：松田沙也
プロデューサー：橋本恵一、本郷達也
主題歌：King & Prince「愛し生きること」（UNIVERSAL MUSIC）
制作：MMJ
製作幹事：東映
配給：東映
©五十嵐律人／講談社 ©2023「法廷遊戯」製作委員会
公式サイト：https://houteiyugi-movie.jp/
公式X（旧Twitter）：https://twitter.com/houteiyugi_mv
公式Instagram：https://www.instagram.com/houteiyugi_mv/

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＜応募締切＞
12月2日（土）