杉咲花は共演者の好演をも引き出す 『恋です!』で披露する一貫性のある演技と“主役力”

周囲の好演をも引き出す杉咲花の“主役力”

 放送中の『恋です!〜ヤンキー君と白杖ガール〜』(日本テレビ系/以下『恋です!』)にて、視覚障害を持つ女性を丁寧に演じ上げている杉咲花。非常に難しそうに思える役どころなものの、主演として作品の中心に立ちながら、自身のみならず周囲の者たちの好演をも引き出している。こんな点に、彼女の“主役力”の大きさが感じられるというものだ。

 杉咲が演じている赤座ユキコは、光と色がうっすら分かる程度の弱視の女性。盲学校高等部3年生の彼女が、ひょんなことから地元で名の知れたヤンキー・黒川森生(杉野遥亮)と出会い、互いに恋に落ち、両者ともに少しずつ変化していくというのが本作の物語の核だ。勝ち気だが恋に臆病だったユキコと、喧嘩っ早いが心根は優しく真っ直ぐな森生。この不器用な二人のやり取りの愛らしさに魅了されている方も多いようだが、互いに手を取り合って、ひとつひとつのハードルを超えて行く際に溢れる切実さは、テレビのモニター越しでもダイレクトに伝わってくる。同じように感じている方も多いのではないだろうか。ドラマチックな展開や、強度のあるセリフに頼るだけではない、俳優陣の好演の賜物だ。

 本作のジャンルはラブコメディーであるとはいえ、題材は軽いものではない。弱視のユキコという役は、視覚に関して健常であるはずの杉咲にとって、より慎重に演じなければならないキャラクターだろう。盲学校の友人である紫村空(田辺桃子)と青野陽太(細田佳央太)もユキコと同じように視覚障害を持っているが、同じようであって、同じではない。その程度はそれぞれ異なる。つまり、杉咲も田辺も細田も、演じ方は異なってくるはず。そしてこの三者の誰もが、とてもに大切に各々の役を演じていると思う。人間それぞれに違いがあり、当然ながら同じ人間はいない。この当たり前のことを、三者とも繊細に実践しているように思うのだ。案内人役として盲目の漫談家・濱田祐太郎による視覚障害についての親切な解説が取り入れられていることも含めて、ドラマ全体の作りが非常に丁寧である。そんな中でも杉咲の、ふとした所作が訴えかけてくるものは大きい。

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