『きのう何食べた?』永遠に観ていたい“愛しい時間” S2で変わったもの/変わらないもの

『きのう何食べた?』は永遠に観ていたい
大橋トリオ / カラタチの夢 (Lyric Video) *テレビ東京系ドラマ24「きのう何食べた? season2」オープニング映像

 さらに、大橋トリオ「カラタチの夢」が流れるオープニングにおいても変化は見て取れる。それまでのシリーズでは2人の風景のみが切り取られていたのに対し、本作ではまず2人の風景から始まり、回によってシロさんの両親の姿やケンジの働く美容室の面々の姿を挟み、それから餃子を囲むシロさんとケンジ、小日向(山本耕史)と航(磯村勇斗)の姿が、それぞれに互いを撮りあう形で映し出されている。

 もちろん、これまでも本シリーズは、シロさんとケンジの2人だけでなく、それぞれの両親や仕事場の同僚、友人たちとの関係性及び、彼ら彼女らの人生の断片を丁寧に描いてきたが、殊更season2のオープニングにおいてそれが強調されているように感じるのは、それもまた、映画版の終盤のケンジの「シロさんとこうして、ずっと2人。すごく幸せ。泣きたくなるくらい幸せ。でもね、シロさんと俺と2人だけじゃだめなんだよ。俺たち、2人だけで生きてるわけじゃないしさ」という言葉に応じる形の変化であるように思う。

 もう1つ、現段階である第5話までの展開で、一貫して描かれていること。それは、2人の関係がいかに素晴らしく、奇跡的であるかということだ。うまくいっていたはずの恋人たち、田渕(坂東龍汰)と千波(朝倉あき)の、カルボナーラが招いた別れ話を描いた第4話を通して「人がどういうことでどれぐらい傷ついちゃうかって、実際のところ本人じゃないとわからない」ことの切なさが描かれたように。

『きのう何食べた?』第5話

 シロさんの元カレ・ノブさん(及川光博)が、シロさんにとって「ドンピシャで好みのタイプ」だったにも関わらず、苦い思い出ばかりよみがえってくる人物だったように。相手のことが大好きでも、美味しいご飯を前にしても、残酷にすれ違う恋もあれば、「タイプ」でも長続きしない恋もある。一方で、シロさんとケンジのように、「全然タイプじゃない」のに、ふとした拍子に「幸せ」を噛み締めることのできる恋と愛もある。そしてその幸せには、互いを大切に思う気持ちと、細やかな気遣いの積み重ね、感謝の気持ちが不可欠で。

 言葉にしなくても時折零れ出るシロさんのケンジへの温かい微笑みと、すかさずそこに潜んだ愛を言葉にして確かめようとしてはしゃぐケンジのキュートさと。全くもって、できることなら永遠に、観ていたいものである。

■放送情報
ドラマ24『きのう何食べた? season2』
テレビ東京系にて、毎週金曜深24:12~放送
Lemino、U-NEXTにて、各話放送終了後から第1話〜最新話見放題配信
出演:西島秀俊、内野聖陽、山本耕史、磯村勇斗、マキタスポーツ、田中美佐子、田山涼成、梶芽衣子
原作:よしながふみ『きのう何食べた?』(講談社『モーニング』連載中)
脚本:安達奈緒子
監督:中江和仁、松本佳奈、平田大輔
音楽:福島節、澤田かおり
チーフプロデューサー:祖父江里奈(テレビ東京)
プロデューサー:阿部真士(テレビ東京)、佐藤敦、瀬戸麻理子
企画監修:神田祐介
制作:テレビ東京、avex pictures
制作協力:オフィス・シロウズ
製作著作:「きのう何食べた? season2」製作委員会
©︎「きのう何食べた? season2」製作委員会 ©︎よしながふみ/講談社
公式サイト:https://www.tv-tokyo.co.jp/kinounanitabeta2/
公式X(旧Twitter):@tx_nanitabe
公式Instagram:@movie_nanitabe

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