『きのう何食べた?』に坂東龍汰が新風を吹き込む 大切だからこそ伝えないといけないこと

『きのう何食べた?』新風を吹き込む坂東龍汰

 人気漫画家・よしながふみの同名コミックが原作のドラマ『きのう何食べた?season2』(テレビ東京)。第4話では、内野聖陽演じる矢吹賢二(以下、ケンジ)が田渕剛(坂東龍汰)から食事に誘われる。田渕の何やら思いつめた様子に、ケンジは「店を辞めるのではないか」と不安がよぎる。物語の主軸となったのは「田渕くん」とその彼女・逸見千波(朝倉あき)の話だ。

 田渕は思ったことを何でも言ってしまう。美容室の客に対して「ブスになってる」と言ってしまうような口の悪さもあって、周囲をハラハラさせている。ただ、客がその毒舌を好意的に捉えていることからも分かる通り、その素直で飾らない性格が田渕の魅力ともいえる。

 そんな田渕からうち飲みに誘われたケンジは、田渕が彼女と別れたことを察した。「あ〜、分かります?」とケンジとやりとりする田渕の雰囲気は、劇場版で松村北斗が演じていた田渕同様、こざっぱりとしており、別れを引きずっている様子はない。しかし、腑に落ちてはいないようで、ケンジが「カルボナーラで、別れたの?」と問いかけた時、唇を噛む田渕のなんとも言えない表情が印象に残る。

『きのう何食べた?』第4話

 田渕の彼女・千波は、田渕と手を繋いで帰る場面でも料理を作る場面でも、背筋をしゃんと伸ばしており、笑顔をあまり見せないことから真面目さが際立つ。テキパキとした所作からは几帳面さが見て取れた。けれど、田渕におかずを取り分ける千波の控えめな笑顔を通じて、彼女にとって田渕と過ごす時間が幸せな時間であることが分かる。

 家事をきっちりこなす千波だが、彼女が作る料理はビミョーにまずかった。田渕を演じる坂東が見せたまさしくビミョーな表情と、千波を演じる朝倉の気まずい面持ちが絶妙で面白い。それでも、はたから見ると2人の関係は良好に見える。何をどうしたら美味しくなるのかわからないと打ち明ける千波を、田渕はけなすこともなければ、変になぐさめることもない。「(醤油を)かけるけど、いい?」と聞き、味を整えた後は黙々と食べ進めていた。「すごい、肉じゃがの味になった...…! なんで?」と驚く千波に、田渕はややたじろいでいたものの、食卓を囲む田渕と千波の間にはただならぬ空気は決して流れていなかった。

『きのう何食べた?』第4話

 ケンジとの会話の中で「まあ、いっかー」という台詞があったように、田渕は千波の微妙に美味しくない料理を大して気にしていなかったのだ。

 そんなある日、田渕はどうしてもカルボナーラが食べたくなり、困惑する千波を横目に自分で調理を始めた。カルボナーラを作る田渕の思い切りのよさには目を見張り、卵液に砂糖を加えることやパスタを茹でるのに使用する食塩の量などに逐一驚く千波の挙動は愛らしい。けれど、調理過程を真剣に見つめ、時折、眉間に皺を寄せて考え込む千波の面持ちからは、のちに明かされる彼女の本心や心苦しさが滲み出ていたように思う。

『きのう何食べた?』第4話

 田渕が作ったカルボナーラは美味しかった。その美味しさは千波が興奮気味に話す様子や大口を開けて食べる姿から十二分に伝わってくる。「あ〜、うまい! ずっと自分が作ったものばっか食べてきたから、こんな美味しいの久しぶり!」と声をあげる千波に、田渕は驚きながらもどこか満ち足りた感じで「めっちゃ感想言うじゃん」と言った。千波の意外な一面を知れて、田渕は嬉しかったのではないだろうか。だが、目の前の食事に顔をほころばせる田渕を見て、千波の心は苦しくなり、思わず食事の手が止まる。

「食べたら、出てく」

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