『ゼイチョー』菊池風磨「チョゼリ過ぎないでね」の真意 税金に切り込む斬新なドラマに
医療ドラマや刑事ドラマを多く輩出してきた日本テレビ系列土曜ドラマが今秋放送しているのは、これまでとは一風変わった“地方税”を取り扱うドラマだ。毎週土曜22時から放送されている『ゼイチョー〜「払えない」にはワケがある〜』(日本テレビ系/以下『ゼイチョー』)は、私たちにとって切り離すことのできない税金にフォーカスし、人々の暮らしに根ざす問題を丁寧に描く。
「払えないにはワケがある」のタイトル通り、本作は、徴税吏員の仕事を通して人が税金を納めない裏に隠された様々な事情をわかりやすく教えてくれる。中でも、第1~3話を通して出てきた住民税は、働く者が必ず納めなければならない税金の一つ。給与所得者の多くは住民税を給料から天引きされるが、様々な状況により家に届く納税通知書を使って払い込むこともある。こうして自らがコンビニや銀行で払わなければならない場合は、第3話の木下(小関裕太)のように、ついつい滞納してしまうことも。一方で、第2話の真名美(田辺桃子)のように払いたくないという明確な意思があって納税義務を怠る人もおり、「税金を払わない」という事実の裏に隠された人々の生活が垣間見えるのもドラマのおもしろさだろう。
これまで『ゼイチョー』は、様々な滞納者の物語を描いてきたが、どちらかというと器用に生きられないタイプの人々をピックアップしてきたように思う。その人たちの裏で、ずる賢く立ち振る舞って少しでも得をしようとする人物が対比のように登場する。特に第3話での、シングルファーザーとして育児と仕事の両立に苦戦する木下と、SNSで “理想のシングル”ともてはやされる瀬戸(見津賢)との対比は、心が抉られるようなエピソードとなった。だが話はここで終わるわけではない。最後は必ず徴税吏員の手により、ずる賢い人たちの悪だくみが暴かれ、困っている滞納者に救いの手が差し伸べられる。『ゼイチョー』は、税にまつわる話を通して「人と人が巡り巡って助け合える社会になればいい」ということを徹底してわかりやすく描いてきたのだ。
さらに見えてくるのは、税金の徴収や財産の差し押さえを行う徴税吏員という職業の難しさ。職務を全うすることで滞納者を追い詰めたり恨みを買ったりすることもあるからこそ、最新の注意を払いつつ向き合わなければならない仕事なのだ。最初はおふざけかと思われた饗庭(菊池風磨)の「チョゼらない」「チョゼリ過ぎないでね」の言葉は、滞納者を追い込み過ぎないようたしなめると同時に、やる気のある華子(山田杏奈)を強い言葉で威嚇しすぎないようにするという二つの配慮が隠されていることも見えてきた。
わかりやすいストーリーを楽しむだけで、税金のことから徴税吏員の業務に至るまで、生活に必要な知識も得られる本作。もしかしたら自分にも利用できる制度があるかもしれないと、市や区のサポートを調べるきっかけにもなり得る。饗庭や華子が言うように、納税は国民の義務だ。だがその義務をマイナスなイメージだけで捉えるのではなく、このドラマが伝える「巡り巡って双方が得をする」という側面にまで目を向けると新たな発見があるのではないか。より税について理解し、どうせ納めなきゃいけないなら気持ちよく納めようという気持ちにさせてくれるドラマが『ゼイチョー』なのだ。
■放送情報
『ゼイチョー 〜「払えない」にはワケがある〜』
日本テレビ系にて、毎週土曜22:00〜22:54放送
出演:菊池風磨(Sexy Zone)、山田杏奈、本郷奏多、石田ひかり、石野真子、結木滉星、市川由衣
原作:慎結『ゼイチョー!〜納税課第三収納係〜』(『BE・LOVE』講談社)
脚本:三浦駿斗
演出:河合勇人、鯨岡弘識ほか
音楽:井筒昭雄、chakia
監修:野村修也
税務指導:堀博晴
チーフプロデューサー:松本京子
プロデューサー:大倉寛子、岩崎秀紀、金澤麻樹
制作協力:日テレアックスオン
製作著作:日本テレビ
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