『いちばんすきな花』明かされた夜々の苦悩 4人が“2人組”2組に分かれる見事な連携プレーも

『いちばんすきな花』明かされた夜々の苦悩

 2人きりになった部室にて、ずっと自分の辛さを「ワガママで贅沢で良くない」と押し込めていた夜々の叫びを、静かに聞くゆくえ。「お人形にならないでね。夜々ちゃんでいてね」と、そのままの夜々を肯定するゆくえの言葉に、夜々は沙夜子に自分の思いをぶつける勇気をもらう。

 それは、内心とても怖かったはずだ。もしこの気持ちが届かなかったら、「母の望む夜々」ではなくなってしまう。そして、それは愛してもらえる条件を覆してしまいかねないから。しかし、沙夜子は夜々の言葉を冷静に聞いてくれた。それどころか、前日に沙夜子が夜々のために買ってきたのはピンクの花がメインのブーケだったけれど、本当は夜々のいちばん好きな花がアジサイであることもわかってくれていた。沙夜子は、きっと本来の夜々のことも見えてはいたのだろう。

 でも、自分が理想とする女の子の道しるべを示さずにはいられなかった。その導きに、夜々もそれに反抗することなくついてきてくれたことを、同意だと思いたかった。だから今回、夜々がはっきりと自分の好き嫌いを話してくれたことは、ショックではあったけれど、納得できたのではないだろうか。これまで「娘だから」と自分が先導してきた夜々の人生を、もう見守っていく側に回るタイミングなのだと。

 個性的な自分を隠して「いい子」になろうとした椿と、周囲の期待に応えようと「お人形」になっていた夜々。2人の過去を振り返ると、彼らが引き寄せられるように友達になったのも頷ける。そして、見た目の良さから利用されがちな夜々と似ている部分を持つのが、「(客寄せ)パンダ」とあだ名をつけられる紅葉だ。

 そんな紅葉の心を温めてきたのは、小さいころにゆくえが言った「紅葉の絵が好き」という言葉。奇しくも、椿も紅葉のイラストを見て「好きだな〜。かわいい」と感想が口をつく。そして、ゆくえは言うのだ。「いいとか悪いには理由がいるけど、好きとか嫌いに理由はなくてもいいんだよ」と。

 その理由のない「好き」には「◯◯だから」という条件なんてないということ。いい人だから椿を慕うのではないし、お人形のように期待に応えてくれるから夜々をかわいいと思うわけでもない。そんな話をしながら、ゆくえを見つめる紅葉の視線が少し気になった。

 ゆくえの好きはどことなく椿が「いちばん好きな花は選べない」と言っていたのと近いように感じた。でも、もしかしたら紅葉の好きはアジサイを「一番好きな花」だと言った夜々のようなことなのかもしれない。この4人なら、2人組になることは怖くなくなったところだが、友情ではなく恋愛が絡んでくるとどうなるのだろうか。次回は、ゆくえのかつての親友・赤田(仲野太賀)が再登場することも相まって、さらに心が揺さぶられそうだ。

■放送情報
木曜劇場『いちばんすきな花』
フジテレビ系にて、毎週木曜22:00~22:54放送
出演:多部未華子、松下洸平、神尾楓珠、今田美桜、齋藤飛鳥、白鳥玉季、黒川想矢、田辺桃子、泉澤祐希、臼田あさ美、仲野太賀ほか
脚本:生方美久
プロデュース:村瀬健
演出:髙野舞
音楽:得田真裕
主題歌:藤井風「花」(HEHN RECORDS / UNIVERSAL SIGMA)
制作・著作:フジテレビ
©︎フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/ichibansukina_hana/
公式X(旧Twitter):@sukihana_fujitv
公式Instagram:@sukihana_fujitv

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