『いちばんすきな花』椿が“無個性のいい人”となった理由 言葉数増える松下洸平が愛おしい

『すき花』椿が無個性のいい人となった理由

 小さいころは、個性的でおしゃべりが好きな子だったという人は少なくないのではないか。しかし「静かにしなさい」「いい子にしなさい」と注意され続けた結果、その個性の伸ばし方がわからなくなった人も。きっと大人たちが言う「いい子」は、全体にとって“都合のいい子”なのだろう。そして、そんな「いい子」を真面目に目指した先には、“都合のいい人”が出来上がるのかもしれない。

 木曜劇場『いちばんすきな花』(フジテレビ系)第3話は、「無個性の“いい人”」となった椿(松下洸平)のエピソードを中心に描かれた。第1話から椿は初対面の相手に対して、異常なほどおしゃべりになるという特徴があった。そして、2度目の再会をとても恐れているという一面も。

 それは、子どものころに個性的でおしゃべりだったことを「落ち着きも協調性もない子」と指摘され、「いい子」になるために“個性的”を隠すようになったから。友達との会話は相槌がメインになり、いつしか怒りや悲しみを外に出さずに対応できるようになっていった。

 しかし、その押し込めた感情たちは隠しているだけで、なくなったわけではない。その我慢が限界に達するタイミングで、椿は通うつもりのない初めての美容室やタバコも吸わないのに喫煙所へと駆け込んできたのだろう。2度目のない初対面=自分がどんなことを話しても気にしない赤の他人を求めて……。

 その溢れ出す言葉たちに、椿がいつもどれだけ思慮深く生きているのかを考えさせられる。誰もが当たり前として見過ごしてしまいそうなことも、一つひとつ自分なりに咀嚼しているのだ。

 好きな人との人間関係は2パターン。「好かれる努力」と「嫌われない配慮」のどちらかしかないこと。そして、例え好き同士だったとしても、それが両想いとは限らない。それぞれが勝手に好きなだけで、「好き」というパッケージに満足する関係性もある。それはもう片想いですらないこと。

 そんな細かなところまで見過ごせない椿だからこそ、実家の花屋でも割り切れない想いを抱いてきた。それは、「花がら摘み」と呼ばれる作業。花を長持ちさせるために、咲ききった花を摘み取ることを言う。

 摘まれる花は、まだすぐには枯れない。今日、あるいは明日まではまだ楽しめる。でも、全体をより良い環境にするために摘まれていく。もしかしたら、そんな摘み取られていく花に、開花した個性を否定された自分が重なるような気がしたのではないだろうか。

 花がら摘みをするのが当然だという環境で育ってきたからこそ、自宅に飾った今日明日で枯れそうな花も「ごめん」と謝りながら処分する。本当は花が枯れる最後の最後まで愛でてあげたいけれど、そうするのが“当然”なのだから。心を痛める自分が悪いのだから、と。

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