朝ドラ『ブギウギ』交錯する母娘の感情 背中を押してくれる人を失ったスズ子の行く先は?
東京行きを反対するツヤに、スズ子は「なんでや。お母ちゃん、絶対賛成してくれる思うてた」と返すのだが、本心では少しほっとした部分もあったのではないか。ツヤの言葉は、たとえ真実を知ったとしても、今まで通りの親子でいようというメッセージであり、スズ子の不安を受け止めるものでもあったからだ。ただ、スズ子の東京行きの思いは、それだけではない。茨田りつ子(菊地凛子)の「別れのブルース」にインスピレーションを受けたスズ子は、大和(蒼井優)にこぼしたように「こんなもんやないやろ」「もっとやれるんちゃうか」と手ごたえを感じており、実力を発揮する場所を求めていた。
六郎に話したように、スズ子はある意味、家族に別れを告げるつもりで、最後に一つだけ、娘としてツヤに笑顔で送り出してもらいたかった。でも、実の子と変わらずにスズ子を育ててきたツヤは、子を奪われる寂しさが物心両面で同時に襲ってきたのだから、ツヤの方にも酌むべき事情がある。本当の親子ではない事実を直視しながら、かたや必死で目を背けようとして、というより、どうすればいいかわからなくて、それでも互いを思い合って、本当のことを言ったら相手を傷つけてしまうから、仕方なく寸足らずの言葉の端に気持ちを込めるもどかしさとあふれ出す感情に、観ているこちらも心を揺さぶられた。
スズ子に決断を促すのは誰だろうと思っていたら、大和の病死によってスズ子の日常は中断した。この間まですぐそばで笑顔を見せてくれた人はもういない。憧れて追ってきた背中を目にすることはないのだ。出生の秘密と尊敬する先輩の死。世界の終わりのような衝撃を受けてスズ子は何を思い、何を歌うのか。目が離せない展開が続く。
■放送情報
NHK連続テレビ小説『ブギウギ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:趣里、水上恒司、草彅剛、蒼井優、菊地凛子、水川あさみ、柳葉敏郎ほか
脚本:足立紳、櫻井剛
制作統括:福岡利武、櫻井壮一
プロデューサー:橋爪國臣
演出:福井充広、鈴木航、二見大輔、泉並敬眞、盆子原誠ほか
写真提供=NHK