朝ドラ『ブギウギ』交錯する母娘の感情 背中を押してくれる人を失ったスズ子の行く先は?

『ブギウギ』上京を巡って交錯する母娘の感情

 知っていても言わないことはある。それでも愛情をもって見守るのが家族かもしれない。『ブギウギ』(NHK総合)第24話では、スズ子(趣里)に東京進出の話が舞い込んだ。

 USKを訪れたスーツ姿の2人は、梅丸東京本社の演出家と社員だった。レビューショーを終えたスズ子たちに向かって、開口一番、「ブラボー!」と賛辞を並べたのは、演出家の松永大星(新納慎也)。松永財閥の御曹司で海外で演劇を学んだ経歴を持つ。部長の辛島(安井順平)は林(橋本じゅん)の部下である。2人の来阪の目的はパフォーマーを発掘すること。「男女混成で外国にも負けない音楽劇やレビューショー」を作るために、USKを視察に来たのだった。

 並みいる劇団員の中で、松永が目を止めたのは秋山(伊原六花)とスズ子。東京行きを打診されて、秋山は「行きたいです」と即答するが、スズ子は行きたいと言いながらも歯切れが悪かった。スズ子が迷っていたのは家族のことがあったからだ。スズ子はもやもやした気持ちを、幼なじみのタイ子(藤間爽子)に相談する。「あの家にワテがおらんいうのが想像つかん」と胸の内を明かした。

 タイ子に背中を押されて、スズ子はツヤ(水川あさみ)に大事な話があると切り出した。てっきり自分たちが本当の親じゃないと知って、そのことだと思っていたツヤと梅吉(柳葉敏郎)は、「東京に行きたい」というスズ子の話に神妙な表情で耳を傾ける。現状に「物足りへんねん」「もっともっと弾けたいねん」と意気込むスズ子に、梅吉と六郎(黒崎煌代)は賛同するが、ツヤは反対した。

 「自分を変えたい」と焦るスズ子と「東京行ってもやることは同じ」と返すツヤのやり取りは、表向きは東京で何をするかについてだが、その裏で、2人とも逆巻く感情を全力で押しとどめていた。

 スズ子の中にぽっかりと開いた穴。心のよりどころで絶対的な存在だった両親が血のつながりのない他人だったこと。自分には別に生みの親がいて、スズ子は花田家の人間ではない。はな湯とそれを取り巻く空間と人間関係から、自分だけ切り離されて閉じ込められたような感覚。行き場をなくした心は目の前にある現実にすがるしかなかった。

 一方のツヤ。第23話でトシ(三林京子)が語ったように、キヌ(中越典子)という実母はいるものの、ツヤは「スズ子を自分のホンマの子や思うとる」。本当の親ではないと知られてしまった時に、スズ子が自分のもとを離れていくのではないか。守り育ててきた存在をこの手から放したくない、そんな不安が見て取れた。

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