ドラマは配信より地上波の方が先鋭的に? 宮藤官九郎の新作連ドラが描く“旧世代の焦り”

宮藤官九郎の新作連ドラが描く“焦り”

 阿部サダヲが主演を務め、宮藤官九郎が脚本を手がける連続ドラマ『不適切にもほどがある!』が、2024年1月期のTBS金曜ドラマ枠で放送される。

 本作は、昭和からタイムスリップしてきた“コンプライアンス意識の低いおじさん・市郎(阿部サダヲ)”が、“コンプラで縛られた令和の人々”に考えるキッカケを与えるヒューマンコメディ。

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阿部サダヲが主演を務め、宮藤官九郎が脚本を手がける連続ドラマ『不適切にもほどがある!』が、2024年1月期のTBS金曜ドラマ枠で…

 ドラマ評論家の成馬零一氏は、「宮藤さんはこれまで青年目線で父と子の関係性を描いてきたが、本作では父親目線から語られるのではないか」と語る。

「これまでに脚本の宮藤さんと磯山晶プロデューサーがタッグを組んで生み出してきたTBSドラマは、長瀬智也主演『池袋ウエストゲートパーク』(2000年)、『俺の家の話』(2021年)や岡田准一さんや櫻井翔さんが出演した『木更津キャッツアイ』(2005年)などジャニーズアイドル主演のものが多かったです。それが阿部サダヲさんが主演になることで、今までの作品よりもさらに先鋭的な表現になると思います。宮藤さんと阿部さんのタッグは、ドラマではNHK大河ドラマ『いだてん〜東京オリムピック噺〜』もありますが、映画『舞妓Haaaan!!!』『なくもんか』『謝罪の王様』では、水田伸生監督の演出もあり、まさしく“大暴れ”の物語が繰り広げられていました。『不適切にもほどがある!』は昭和から令和にきた男がコンプライアンスを無視して大暴れする話。宮藤さんが舞台を手がけるときの大人計画のものや、水田監督作品のようなエネルギーが詰まった作品になるのではないでしょうか。これまでの宮藤作品の主人公は若者が父親になる話が多く、家業をどう継ぐべきかといった青年の悩みを描いてきましたが、今回は阿部さんが父親役を演じるので、父親の立場から令和の子供たちと接する展開も予想できます。そうなると、どちらかといえばこれまでにない“大人の視点”からの物語が描かれるような気がしています」

 宮藤と磯山プロデューサーは長らくキャリアを共にしてきた。その中で描いてきたテーマについて、成馬氏は「近年は旧世代の焦りを描こうとしている」と語る。

「50代の父親が主人公になるので、これまで2人が作ってきたドラマとは目線が大きく変わるのではないかと思います。宮藤さんと阿部さんは同じ年齢で、若い時からいっしょに仕事をしてきた仲で、年齢を重ねるにつれて、阿部さんが演じる役も年齢と社会的立場が変わっていったのですが、ついにこういう役を演じるようになったのかと感慨深く感じます。また、これは宮藤さんが磯山プロデューサーと描いてきたテーマとも繋がるのですが、この数十年でコンプライアンスの概念が普及したことによって、当事者を傷つけるような差別的表現はやめて、価値観をアップデートしていこうという意識が高まる一方で、規制が強まることによって何かが失われていくように感じる旧世代の焦りみたいなものを宮藤さんたちが感じていて、そのことに対する違和感を今回は描こうとしているのではないかと思います。視聴者がどちら側にいるかどうかで評価が割れてしまうかもしれませんが、今回は昭和と令和で明確に立場が分かれます。“時代の変化”というものに置き去りにされた側から描きたいというのは明確に感じますし、『池袋ウエストゲートパーク』や『木更津キャッツアイ』のときから観てきた立場からみると、歳を取ったなりのコメディをやってくれるのではないかと期待しています」

 宮藤の直近の作品は『離婚しようよ』(Netflix)と『季節のない街』(ディズニープラス)と、配信プラットフォーム上で一挙配信されるドラマ。宮藤の地上波ドラマは久々となるが、成馬氏はプラットフォームの違いが作品に及ぼす影響について、次のように語った。

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