大石静×宮藤官九郎、初タッグで得たものは? 2人の“脚本術”に迫る

大石静×宮藤官九郎、共同脚本で得たもの

 Netflixにて全世界配信が開始された『離婚しようよ』。愛媛の三世議員の夫・東海林大志を松坂桃李、ドラマ『巫女ちゃん』で大ブレイクした国民的女優・黒澤ゆいを仲里依紗が演じる。この情報だけでもワクワクするのに、大石静と宮藤官九郎という日本のエンタメシーンを牽引してきた脚本家がタッグを組むというのだから、面白くならないわけがない。実際、そんな期待値のハードルを軽々超える一作となっている。大石と宮藤はどんなコミュニケーションの上に本作を作り上げたのか。2人の脚本術を聞いた。

交換日記方式で進められた脚本執筆

――おふたりの共同脚本のドラマが作られると聞いたときは驚きました。まず、率直にタッグが決まったときの気持ちを教えていただけますか。

宮藤官九郎(以下、宮藤):最初に「恋愛ドラマをやりましょう」と磯山(晶)プロデューサーから声をかけていただいたのですが、1人ではとてもできないと思っていたんです。そしたら大石さんとの共同脚本ということで、これはいっぱい勉強させてもらえるなと。ただ、誰かと共同で脚本を手がけたことはなかったですし、自分の書き方が“合っている”かも分からなかったので、その点は心配でした。でも、それを超えて一緒に作ることができるのを楽しみにしていました。

大石静(以下、大石):どういうことなのかと思いました(笑)。私も、共同脚本で作品を作ったことはほとんどなかったので。当代一の脚本家である宮藤さんが、「私とでもいいですよ」と磯山プロデューサーが言っているというので、それならと。

宮藤:いやいや(笑)。

大石:怖さはあったのですが、断ってしまったら何も得られないなとも思いましたし、「挑戦してみよう!」と自分で自分の背中を押した感じです。

大石静&宮藤官九郎
(左から)大石静、宮藤官九郎

――同じ脚本家と言っても、書き方はまったく違うと思います。その点はどうやってすり合わせていったのでしょうか?

大石:実はその点は合わせようというものはなくて、違ったままで書いていったんです。

宮藤:プロットの段階では、ハコ書きをそこまできっちり書かないんです。なので、ふわっとした形になりがちなのですが、大石さんがすごく細かく書いてくださるので、非常に勉強になりましたし、助かりました。

大石:私はハコ書きを細かく書かないと、その先が見えて来ないので……。お互いにどちらかのスタイルに寄り添うというわけでもなく、進んでいきましたね。

宮藤:僕はすごく影響を受けまして、本作の次に書いた作品は、プロットの段階から、かなりきちっとセリフを書いていました。

ーー脚本は交換日記方式で、1話ずつなどで区切らずに交互に少しずつ進めていったそうですね。

宮藤:そうなんです。普段であれば、書けなくなったときに行き詰まるのですが、早く大石さんに渡さないといけないというプレッシャーもあり、自分の中にないものを無理に書こうとしても駄目なので、書けないところはもう大石さんにお願いしちゃえと(笑)。その点は楽な部分はありました。

大石:そんなこと言っているけど、私も書けないでお任せしているのが多かったから(笑)。面白かったのは、宮藤さんが勢いにノッて書いている部分、淡々と書いている部分がありありとわかるところ。ノッているときは、行変えもせずに誰が喋っているかもわからないような形でセリフが怒涛のように書かれていて(笑)。でも、行替えも忘れてしまうぐらいに、ここは溢れるものがあったんだろうなと感じ取れたので、そういったパッションが見えてくるのは面白かったですね。

ーー本作はNetflix作品ということで、CMが作品中に入ることはありません。しかも一挙配信ということで、脚本を手掛ける上でも、民放地上波作品との違いなどはありましたか?

宮藤:書き初めてから、地上波ドラマの癖が残っていることに気づきました。CMのタイミングもそうですし、どうしてもまた1週間空くという感覚で、次へのひっぱりをやたら意識してしまったり。

大石:そうそう。でも、絶対に「次に続く」を作ってしまうのは私たちの癖かもです。

宮藤:来週までモヤモヤしろよと思うんだけど、観る人は来週じゃなくて、すぐ観れると。ただ、尺を1話ごとに気にしなくていいのは、やりやすかったですね。

大石:CMもなく、尺の縛りもないので、とにかく密度が濃いです。普段手を抜いているという意味ではないんですけど、どうしても1人で連ドラを書くと、繋ぎのシーンというか、ふっと力を抜いたシーンがあるんです。でも、今回は宮藤さんと私が全力でやっているから、全然ふわっと抜ける箇所がなくて。思わず磯山プロデューサーにも、宮藤さんにも、「ちょっと息苦しくないですか?」と聞いたんですよ。でも全然聞いてないみたいに無視されちゃって(笑)。イッキ見してくださる方は、かなり疲れるかもしれません(笑)。その点は好きなときに止めて、好きなときに続きを観ることができる配信ならではの魅力だと思うので、密度の濃さをお楽しみいただきたいですね。

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