朝ドラ『ブギウギ』趣里の“底力”が花開く瞬間が待ち遠しい スズ子が目立って見えない理由
朝ドラことNHK連続テレビ小説『ブギウギ』第3週「桃色争議や!」では、福来スズ子(趣里)が梅丸少女歌劇団(USK)の劇団員になって6年が経った。
いよいよ趣里の出番だが、なんだかスズ子が目立たない。演技は申し分なく巧いのだが、「大阪音頭」を歌ったり、「コラァ」と凄んだり、大阪のパワフルさを出そうとしてやや空回りしているように見える気がして……。東京出身だからしょうがないのだろうかなどとも思ったが、これはきっと意図的なものに違いないという結論にいきついた。スズ子はいわゆる“不憫かわいい”系。
昭和8年、不景気の波がやってきて、USKでも人員削減、賃金削減が断行される。幸い、スズ子は削減対象にはならなかったが、新人が泣く泣く辞めていったり、家の経済的事情が苦しい桜庭和希(片山友希)は賃金カットされるとさらに苦境に立たされたり、みんな困っている。
劇団員のつらい状況を見過ごせない大和礼子(蒼井優)が会社の上層部に労働環境改善の交渉をはじめる。スズ子たちも協力。それは「桃色争議」として新聞記事にもなった。この時代、労働者の運動や共産主義的活動は「アカ」と呼ばれ、国に反する行為とされていた。梅吉(柳葉敏郎)は逮捕されるんじゃないかと心配する。どんなときでもツヤ(水川あさみ)はどんっと構えて、スズ子のやりたいようにやればいいと励ます。
スズ子は歌や踊りが大好きで舞台の仕事をしているものの、自分の「売り」が見つけられないでいる。大和や橘アオイ(翼和希)や花咲歌劇団から移ってきた秋山美月(伊原六花)たちは個性も実力も光っている。同期のリリー白川(清水くるみ)も容姿を武器にして順調にやっている。
スズ子と同じく悩んでいるのは和希。いまだに脇役で、同じ男役の美月に差をつけられ自信をなくしている。スズ子が和希に「一緒に追い抜かれよ」と言うセリフは切ない。
最初のうちはやみくもにがんばれるが、6年というのは、絶妙な時間だろう。3年くらいだと諦めもついて転身できるが、6年もいた分、いまさら進路を変更するのもためらわれる。
10年がんばってみようかと思うけれど、10年はけっこう長い。とりわけ昭和初期と今では時間の感覚が違うだろう。昭和初期の頃のほうが平均寿命も短いし今より人生の猶予は少ない気がする。