日本アニメを世界的ヒットに導くCrunchyrollの存在 英語吹き替えなど海外配信の今
「日本のアニメが海外で評価されている」という話は今に始まったことではない。しかし、毎クールさまざまなアニメが放送される中で、不思議と「海外人気」が強調されるアニメがある。現在TOKYO MXほかにて放送中の、アニメ『盾の勇者の成り上がり』もその一つだ。
『盾の勇者の成り上がり』は、原作の国際的な人気も非常に高い作品であり、その人気を引き継ぐようにアニメも多くの海外ファンから愛されている。実際、アニメ第3期のPVのコメント欄は、日本語以外の多言語で書かれた応援メッセージで溢れている。
この人気について、まず異世界に転生し、冒険する「異世界ジャンル」の物語が幅広く愛されていることが理由に挙げられる。『盾の勇者の成り上がり』以外にも『転生したらスライムだった件』や『無職転生』、『RE:ゼロから始める異世界生活』などがこの系譜に属しており、異世界ブームに火をつけた。その人気は日本語の「異世界」(isekai)という言葉が、現在では国際的にも認知され始めているほど。
また、異世界ジャンルの魅力といえば、舞台背景が限定されておらず、国を越えて多くの人々が世界観に没入できる点だろう。さらに共通のテンプレートに従う作品も多く、“お決まり”の設定や展開、世界観が存在する。しかし、それは必ずしもネガティブな要素ではなく、テンプレートを理解し、それを構成する要素を引き算できる面白さもある。
第1期の『盾の勇者の成り上がり』に関して、制作のキネマシトラスからは「もともと戦略的に(海外を)目指したと聞いているので、そこは達成できているのではないかと思います。テンプレどおりでなく意図的に外しているところがあって、“なろう”の部分をうまくかわして、キネマなりの作品になっている手応えはありますね」との言葉も(※)。2期からは韓国のアニメ制作会社「DR MOVIE」との共同制作になったことによる作画の変化を指摘する視聴者からの声もあるが、根本的な要素としてはテンプレートからの“外し”要素が海外で評価されているのかもしれない。
さらに、『盾の勇者の成り上がり』の人気には、とある配信プラットフォームが大きな影響を与えている。世界中で「日本アニメ」を提供するCrunchyroll(クランチロール)だ。日本国内では利用ができないためあまり馴染みがないかもしれないが、Crunchyrollは世界200カ国以上の地域でサービスを提供しており、イベントやマンガ出版などを通じてアニメコミュニティを築いている。
たとえば、Crunchyrollは、愛されるアニメを作ったクリエイターやミュージシャンなどを讃える「Crunchyroll Anime Awards」を開催している。2020年の表彰では、最優秀女性キャラクター賞をラフタリアが、最優秀声優賞英語部門を主人公・尚文の英語吹き替えを演じたビリー・カメッツが受賞した。
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多くの作品は米独仏など各国の言語に訳された字幕編のみの配信となるため、吹替版が配信されるのは一部の作品のみとのこと。そんな中で『盾の勇者の成り上がり』では、このような英語吹替版が提供されている点も、海外で人気を博している要因の一つだ。