『ミニオンズ』『スーパーマリオ』が大成功 イルミネーションがディズニー1強に終止符?

イルミネーションがディズニー1強に終止符?

 スタジオジブリを子会社にしても、日本テレビ系の『金曜ロードショー』がすぐにジブリ作品ばかりになるわけではない。10月6日にはイルミネーション・エンターテインメントの『怪盗グルーのミニオン大脱走』、10月13日には『ミニオンズ』を放送し、イルミネーション作品を看板作品として取り扱っている。イルミネーションは、2023年4月公開の『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』が興行収入で『アナと雪の女王』を抜いて歴代2位を記録。『トイ・ストーリー』のピクサーを含むディズニー系と並ぶ存在感を見せている。ディズニーが最強だった長編アニメ映画界に2強として並ぶのか。ほかに続くところは出てきているのだろうか。

 世界での興行収入が13億ドルを突破し、日本だけでも130億円の興行収入を稼ぎ出した『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』の大ヒットを、誰もが予想できたかというと難しい。プロの批評家による評価は芳しくなく、今も批評サイトの「Rotten Tomatoes」では高評価が59%に留まり、“腐ったトマト”を投げつけられた状態にある。

 ところが、一般の評価は正反対で95%が支持を表明。何より興行成績が映画の面白さを表している。もとより『ミニオンズ』や『SING/シング』といった人気作品を送り出し、ミニオンたちのコミカルな動きから『グリンチ』のフサフサと生えた毛の表現まで、ディズニーやピクサーに負けないビジュアルを実現してきたイルミネーションの作品だ。ゲームで遊んだマリオやルイージ、そしてピーチ姫が動き回る姿を楽しみ、冒険に次ぐ冒険を繰り広げるストーリーを堪能した。

『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』©︎2023 Nintendo and Universal Studios

 不安があったとしたら、怪盗グルーやミニオンといったオリジナルのキャラクターを使い、独自のストーリーで評判を得てきたイルミネーションが、世界的ともいえる任天堂のマリオを扱って、しっかりとしたストーリーを組み立てられるのか、面白い作品に仕上げられるのかといったことだった。そこをイルミネーションは、マリオの生みの親の宮本茂と話し合い、決断を仰ぐことで誰もが納得できるものにした。

 こうした共同作業を厭わないスタジオだと分かったことで、任天堂以外の巨大なエンターテインメント企業が、イルミネーションに自社のキャラクターのアニメ映画化を任せることがあるかもしれない。任天堂自体も他に抱えた数多くのキャラクターを、イルミネーションで映画化する可能性もある。何しろイルミネーションCEOのクリス・メレダンドリは、任天堂の社外取締役に就いている。共同作業が進めば、興行収入でディズニーやピクサーを超える作品を連発し、アニメ映画界の地図を塗り替えることも起こりうるだろう。

 加えてイルミネーションは、『怪盗グルー』シリーズや、そこから派生した『ミニオンズ』シリーズをはじめとした、オリジナリティを持ったキャラクターを生み出し、物語を作り出す力を持っている。鍵となるのがイラストレーターのエリック・ギロンだ。怪盗グルーもミニオンたちも、『ペット』や『SING/シング』の動物キャラクターたちも、その筆先から生み出されて世界的な人気を得た。ミッキーマウスを生み出したウォルト・ディズニーの現代版とも言える才能だ。

『ミニオンズ』©2015 Universal Studios. All Rights

 ベン・クロールが書いた『ミニオンたちの世界 エリック・ギロンによるイルミネーションアニメのキャラクター創造の秘密』(ディスクユニオン)の中で、クリス・メレダンドリは「たった1枚の絵で映画の特徴ばかりか、その心や魂までも表現できる並外れた技量を持っている」とエリック・ギロンのことを讃えている。

 独善的なアーティストといった人物ではない。今でこそミニオンたちは、丸い頭と大きな目を持った黄色い姿で世界中のファンに愛されているが、当初のデザインはオーバーオールを着て大きな鼻を持った作業員風の小男だった。それを制作に合わせてロボットに変え、エイリアンのような風体に変え、両方を合わせたような円筒形の黄色い生き物へと変えていった。制作途中のエイリアンでは不気味さが先に来て、とても人気キャラクターにはならなかっただろう。

 ミニオンの体型や髪型が少しずつ違っているのは、エリック・ギロンが見分けやすいようにと配慮してデザインしたから。群体でありながらも個性が感じられるキャラクターになったことで、ケビンやスチュアート、ボブといったミニオンたちが冒険の果てにグルーの元へとたどり着く『ミニオンズ』という作品も成り立った。エリック・ギロンは目下、『怪盗グルー』シリーズの第4弾に関わってるようで、そこでどのようなデザインを見せてくれるかが今から楽しみだ。

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