『どうする家康』松本潤×広瀬アリスの名言を噛みしめる 於愛がたどり着いた“本当の笑顔”
「人の生きる道とは、つらく苦しい茨の道……。そんな中で、慕い慕われる者あることがどれほど幸せなことか……。それを得たのなら、大事にするべきと思うまで」
於愛の言葉は千代に向けられたものでもあり、かつての於愛自身に向けられたものでもあるはずだ。夫に先立たれ、幼子を連れて側室となった於愛は、自身の心を偽り続けてきた。けれど、家康との日々に幸せを感じるようになり、その日々を大事にすべきだとどこかで思い立ったのではないか。
思えば、家康が千代に「幸せになることは生き残った者の務めであるとわしは思うぞ」と言った時、その言葉に聞き入るような於愛の表情が映し出されていた。於愛は亡き夫をずっと慕い続けてきたのかもしれない。慕う人を亡くした以上、幸せになってはいけないと考えていたのかもしれない。そんな折、家康との日々が於愛に笑顔を偽ることを忘れさせてくれた。心の底から幸せを感じられるようになった於愛にとって「幸せになることは生き残った者の務めである」という言葉が心に優しく響いたのではないだろうか。家康が瀬名と信康との思い出を笑顔で語れるようになったのと同じように、於愛もまた、本当の笑顔で家康と向き合えたといえる。
物語の終わり、語り部(寺島しのぶ)によって於愛の死が伝えられた。魅力的な登場人物の最期はどのような形であっても切ないものだが、家康やその家臣、多くの民々に慕われた於愛らしい幕引きとなった。
■放送情報
『どうする家康』
NHK総合にて、毎週日曜20:00~放送
BSプレミアム、BS4Kにて、毎週日曜18:00~放送
主演:松本潤
脚本:古沢良太
制作統括:磯智明
演出統括:加藤拓
音楽:稲本響
写真提供=NHK