『どうする家康』松本潤×広瀬アリスの名言を噛みしめる 於愛がたどり着いた“本当の笑顔”

『どうする家康』於愛の“本当の笑顔”

 『どうする家康』(NHK総合)第36回「於愛日記」。家康(松本潤)は真田昌幸(佐藤浩市)から、北条に領地を渡す代わりに徳川の姫がほしいと頼まれた。家康は本多忠勝(山田裕貴)の娘・稲(鳴海唯)を養女にして嫁がせようとするが、父娘とも真田への輿入れに反対する。また一方で、家康が探していた武田の女性・千代(古川琴音)を鳥居元忠(音尾琢馬)がかくまっていたことが分かる。

 稲が真田への輿入れを決意した時にも口にしていたが、第36回は「夫婦をなす」という「おなごの戦」が描かれた回ともいえる。稲、千代、そして於愛(広瀬アリス)がそれぞれの思惑を胸に抱き、「夫婦」という形に向き合った。とりわけ、忍びの過去を持つ千代の一件は、於愛の過去から現在への心情の変化を表すものでもあった。

 千代はかつて、武田勢の忍びとして暗躍していた。その過去もあってか、忠勝は千代を真田の忍びだと疑い、元忠は真田の罠にかかったのだと声をあげる。しかし千代はその疑いを晴らそうとはせず、「非道なことをさんざんしてきた私の言葉に信用などありますまい」と答えた。

 けれど、於愛だけは千代の真意を見抜く。千代が「きっと偽りでございましょう」と微笑んだ時、於愛は千代を気にかけるまなざしを向けた。笑顔を絶やさず、周囲に癒しを与えてきた於愛だが、実は夫を戦乱で亡くしている。夫の亡骸の横で自害しようとする於愛からは深い喪失感が伝わってくる。そんな於愛はお葉(北香那)から「嘘でも笑っていなされ」と言われたのをきっかけに、嘘でも笑うことを心がける。第23回で初めて登場した時から、広瀬演じる於愛のおおらかな笑顔とユーモア溢れる言動はとても魅力的に感じられただけあり、まさかそれが偽りの笑顔だったとは思いもしなかった。加えて於愛は、家康の側室になるも、家康について「心から敬い申し上げているけれど、お慕いするお方ではない」と日記に綴っていた。

 笑顔や慕う気持ちを偽ってきた於愛だからこそ、千代が本当に元忠を慕い、本心を偽ったことに気づいたのだろう。

 劇中、於愛は過去を振り返る。瀬名(有村架純)と信康(細田佳央太)が自害し、深く傷ついた家康の姿を見た時、於愛はある決意を固めた。

「笑っていよう。たとえ偽りの笑顔でも絶えずおおらかでいよう。この方がいつかまたあのお優しい笑顔を取り戻される日まで」

 於愛の笑顔がいつまで偽りだったのかは定かではない。しかし、偽りであったにせよ、傷心の家康を支え続けた於愛は心優しく、芯の強い人物である。そして、家康が少しずつ笑顔を取り戻すとともに、於愛の心情にも変化があったはずだ。

 家康は千代に、忍びの過去を捨て、元忠の妻として生きるよう伝えた。元忠と千代が深々と頭を下げると、家康は「わしは於愛の助言に従ったまでじゃ」と微笑む。於愛は言った。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「リキャップ」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる