『何曜日に生まれたの』溝端淳平に見えた“大きな闇” 色濃くなっていく野島伸司らしさ

『何曜日に生まれたの』公文の“大きな闇”

 純平(YU)、悠馬(井上祐貴)、瑞貴(若月佑美)、リリ子(片山友希)、健人(濱正悟)。公文(溝端淳平)が描くすい(飯豊まりえ)の物語のピースがついに揃った。

 そんな中、『何曜日に生まれたの』(ABCテレビ・テレビ朝日系)第5話では、リリ子がすいと純平の運命を狂わせた10年前のバイク事故について「原因は私なの」と告白。果たしてあの日、何があったのか。それは公文の言う、“青い時間”に生まれたそれぞれの心の闇が表出した結果だった。

 事故当日、すいと純平が2人で向かったのは、サッカー部の合宿が毎年行われる海。その合宿では、いつも“間引き”のために部員自らが辞めるというまでキツイ練習が続いたという。自分を一切取り繕うことができないその場所に純平がすいを連れていったということは、おそらく告白だろう。そう予想したリリ子は嫉妬に耐えられず、ある人物を脅してバイクに細工をさせた。

 その人物とは、バイク修理を請け負う店の息子・健人。瑞貴いわく、彼女に思いを寄せていたという健人がマネージャーたちの着替えを盗撮していたところをリリ子は目撃した。そして、みんなにそのことをバラさない代わりに自分の依頼を引き受けさせたのだ。しかし、健人の動機はもっと別のところにあったのだろう。補欠でありながら、キャプテンを務めていた彼の中では、サッカー部の二大巨頭である純平と悠馬に対する羨望と嫉妬が常に渦巻いていた。自分も一度でいいからピッチに立ちたい。スポットライトを浴びてみたい。そんな思いが悪い意味で健人の背中を後押しし、彼を犯行へと向かわせたのである。

 公文のマンションに現れたリリ子に、一連の真実を聞かされたすい。信じられない気持ちでいる彼女に対し、 追い討ちをかけるかのごとく「誰しも心に、本アカと裏アカを持つものです」と語る公文。彼が言うように、たしかに人は誰しも少なからず心に闇を抱えているものだ。あの人さえいなければ、あの人が自分の目の前から消えてくれれば……そんな表立っては言えないことを、誰にも見えない裏アカで呟いたりもする。だけど、闇が深くなっていくうちに、タガが外れて本アカで本音をぶちまけ、相手を傷つけてしまう人もいるのだ。悠馬と瑞貴が酷い言葉をすいに投げかけ、リリ子や健人が心に浮かんだ願いを実行に移してしまったように。

「繊細で優しい側の人間が苦しむ世界線には、いい加減うんざりなんです」

 物語のヒロインであるすいに感情移入するあまり、恋心を抱いたのかと思われた公文だったが、彼がすいを突然避け始めた理由は別にあった。いわば、不本意にも負の感情の掃き溜めになってしまったすい。そんな彼女が傷つき、苦しむ姿を公文は直視できなくなった。すいの父・丈治(陣内孝則)もそのことに気づき、無遠慮で冷酷な公文には、素朴で優しい別の一面があるのではないかと思い始める。

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