『何曜日に生まれたの』溝端淳平に見えた“大きな闇” 色濃くなっていく野島伸司らしさ

『何曜日に生まれたの』公文の“大きな闇”

 おそらく、すいと公文は繊細で傷つきやすいところが似ているのだろう。事故の真相に加えて、もはや互いへの愛情が失われてしまった悠馬と瑞貴の夫婦関係に巻き込まれてしまい、身も心もずぶ濡れになったすいに傘をさしたのは公文だった。冷たい雨から逃れ、自分たちだけの世界で2人は“生まれ曜日”について語らう。多幸感のある場面とは裏腹に、公文の「水曜日は優しさと引き換えに、悲しみがいっぱい」という一言に彼の大きな闇が見えた。

 さて、物語もそろそろ折り返しを迎える本作。当初よりジャンルに関しては明言されていなかったが、ここ数話でミステリー色が強まりつつも、愛憎渦巻く人間ドラマやラブストーリーでもあり、いろんな要素が複雑に絡み合っている。

 そんな本作が放送されているのは、今年4月に新設されたABCテレビが制作する日曜22時の連続ドラマ枠。第1弾『日曜の夜ぐらいは..』では岡田惠和脚本でラジオ番組をきっかけに運命的な出会いを果たす女性3人組の友情が描かれたが、ドラマにはつきものである大きなトラブルが一切なく、終始牧歌的であたたかなムードがお茶の間を包み込んだ。そこには、日曜の夜に多くの人が抱える憂鬱な気持ちを少しでも取り除きたい、という岡田の願いが込められていたように思う。

 きっとこの枠は各々の脚本家が視聴率ばかりに囚われず、やりたいことを伸び伸びと表現できる場所になっていくのだろう。その意味でも、野島伸司らしさが徐々に色濃くなっていくこのドラマの後半戦からも目が離せない。

■放送情報
『何曜日に生まれたの』
ABCテレビ・テレビ朝日系にて、毎週日曜22:00〜放送
TVer、ABEMAにて、地上波放送終了後見逃し配信 
TELASA、U-NEXTにて、第1話~最新話まで見放題配信
出演:飯豊まりえ、溝端淳平、井上祐貴、YU、若月佑美、片山友希、濱正悟、早見あかり、シシド・カフカ、陣内孝則ほか 
脚本:野島伸司
企画・プロデュース:清水一幸
プロデューサー:南雄大、松原浩、柴田裕基、難波利昭
制作プロデューサー:奈良井正巳
演出:大塚恭司、岩本仁志、松原浩
音楽:福廣秀一朗
主題歌:The Hollies「Bus Stop」
制作著作:ABCテレビ
©︎ABCテレビ
公式サイト:https://www.asahi.co.jp/nanuma/
公式X(旧Twitter):@nan_uma_abc 
公式Instagram:@nan_uma_abc
公式TikTok:@nan_uma_abc

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