『真夏のシンデレラ』宗佑役で存在感 水上恒司、“特別な役の解釈”ができる稀有な役者に

水上恒司が演じてきた“特別な役の解釈”とは

 若手俳優の活躍が目覚ましい『真夏のシンデレラ』(フジテレビ系)。中でも存在感を放つのが、早川宗佑を演じる水上恒司ではないか。夏海(森七菜)たち“海辺のシンデレラ”と仲良くなる健人(間宮祥太朗)、守(白濱亜嵐)、修(萩原利久)ら3人とはまた違った場所から理沙(仁村紗和)にアプローチする宗佑は、彼女にとって命の恩人でもある。さらに物語の中盤では、ライフセーバーというだけでなく小児科医をしていることも発覚。思わぬハイスペ男子ぶりが視聴者の心をガッチリと掴んだ。

 水上はデビュー以来、「岡田健史」の芸名で活動していたが、2022年途中からは本名の水上恒司に変更した。本稿では岡田健史時代の作品にまで遡り論じたい。2018年、水上は『中学聖日記』(TBS系)のオーディションで主演・有村架純の相手役という大役を勝ち取り芸能界デビューした。水上が演じた黒岩晶は未成年でありながら、教師である聖(有村架純)に惹かれてしまうという役どころ。簡単に結ばれることのない禁断の純愛を描いた本作は大きく話題となった。また、水上のピュアさと危うさを兼ね備えた芝居が晶というキャラクターと重なり、世間にも大きなインパクトを残しただろう。

 その後、『MIU404』(TBS系)の九重世人役でキャリアゆえの葛藤を表現し、『ウチの娘は、彼氏が出来ない!!』(日本テレビ系)では入野光役で大学の人気者にして隠れ二次元オタクという二面性を見せてくれた。この後、NHK大河ドラマ『青天を衝け』に出演し、尾高平九郎役で初めて実在の人物を演じる難しさに直面する経験も味わう。水上は一つ一つの役で爪痕を残し、ここまで着実にキャリアアップしてきた。映画『死刑にいたる病』(2022年)では阿部サダヲとのW主演。連続殺人鬼からの依頼により冤罪を証明しようとする中で、衝撃の真実と直面する大学生の雅也を演じた。かなりの難役でありながら、揺れ動く心情を見事に表現。白石和彌監督からは「強い芝居をしてくると思っていたので意外でしたが、いざ作品が出来上がってみると彼のアプローチが正解でした」との評価を得ており、信頼も絶大だ。(※1)これまでの出演作以上に骨太な内容を描いた本作は、水上にとってもターニングポイントとなっただろう。

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 水上の“想定外の芝居”については、彼のデビュー作である『中学聖日記』の新井順子プロデューサーが当時興味深い話をしていた。「セリフを言ったあと、普通だったらこういう顔をするだろうなと思う場面があるのですが、彼は予想外の表情を見せてくれるんです」とし、不思議な芝居をする独特な感覚は演技が初めてだから生まれてくるのだろうと分析していた。(※2)確かにこの時の水上は、演技経験がほぼない状態で『中学聖日記』に出演していた。だが数々の評価や彼の演技を振り返るにつけ、水上にしか成しえない“特別な役の解釈”ができる稀有な役者なのだろうという思いがこみ上げる。

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