作品の核を担い続ける岡田健史 『死刑にいたる病』は現時点の集大成が見られるものに
白石和彌監督最新作『死刑にいたる病』において、阿部サダヲとダブル主演を務めている岡田健史。出演する作品ごとにその中核を担い続けてきた彼の本作での演技は、2018年のデビューから4年目を迎えた現時点における集大成が見られるものになっている。
新作映画ランキングにて初登場5位を獲得し、非常にハードな作品ながらも話題と注目を集め続けている『死刑にいたる病』。本作は、ジャンルとしては「サイコ・サスペンス」と謳っているが、それ以外にもミステリーやスリラー、さらには人間ドラマまで、いくつものジャンルを内包している作品だ。そういうこともあってか、単純に「怖い映画」として嫌厭されているわけでもないらしい。言うなればこの、観客の興味・関心を引くポイントの大部分を担っているのが岡田なのだ。
岡田が演じているのはごく普通の大学生・雅也。彼はある日、日本中を震撼させた連続殺人鬼・榛村(阿部サダヲ)から一通の手紙を受け取る。この榛村という男は、行方不明中の少年少女24人を殺害した容疑で逮捕され、うち9件で立件・起訴、死刑判決を受けている。しかし、最後の成人女性が殺害された事件だけは「冤罪」なのだと榛村は訴えている。彼から雅也への依頼は、“他に犯人がいるのだと証明する”こと。幼い頃、榛村が経営していたパン屋でお世話になっていた雅也は彼の願いを聞き入れ、独自の調査に着手。やがて雅也は、想像を絶する事件の真相へとたどり着くことになる。
阿部と岡田のダブル主演とはいえ、作品を牽引するのは岡田である。彼の視点によって物語は語られていく。しかしながら能動的な演技を展開しているのは阿部の方であり、岡田は“受けの演技”に徹している。異常者である榛村に雅也が翻弄されるさまを岡田は表現し、これによって物語は先へ、そして深みへとハマっていく。雅也はどこにでもいるごく普通の青年であり、榛村と比すれば観客の共感を呼ぶのは明らかに彼の方。榛村という異常者を前にした雅也は、社会の規範内で過ごす私たちを代表するような人物なのだ。榛村の言動に狼狽したり、静かな興奮を見せたりと、岡田の的確なリアクションは、スクリーンを見上げる我々の素直なリアクションと一致するものである。