『らんまん』現在とは正反対の“終わった場所”の渋谷 “観察”の視点が寿恵子の背中を押す

『らんまん』寿恵子の背中を押す観察の視点

 『らんまん』(NHK総合)第114話は寿恵子(浜辺美波)の「渋谷発見伝」だった。寿恵子はみえ(宮澤エマ)から聞いた住所を訪ねて、渋谷へ足を運ぶ。

 旅人が行き交う街道筋の集落。道玄坂と宮益坂の谷あいに位置し、農村ののどかさと宿場町の風情が同居する。明治30年の渋谷は、今とは比べものにならないくらい田舎で、そして貧しかった。第113話で万太郎(神木隆之介)に商いをやりたいと宣言した寿恵子。まずは現地視察と渋谷へ足を延ばす。しかし、その場所は想像以上に荒れ果てていた。

 路地裏の一軒家。昼間から酔いつぶれている男にカラスの鳴き声。主のいない家屋は人影が絶え、やぶ蚊が飛び交うなど衛生面の不安もある。飲んだくれていたのは、居酒屋の店主・荒谷(芹澤興人)だった。寿恵子は、荒谷に渋谷がどんな町か尋ねる。返ってきたのは「好きも嫌いもねえだろ。なあ、渋谷だぞ?」という答えだった。

 目的地で最初に出会った「第一村人」に相当する荒谷は、寿恵子に渋谷の悪印象を植え付けるのに十分だ。他に行くあてもないので仕方なく渋谷にいるだけ。地べたにうつ伏していた荒谷は、寿恵子に渋谷はやめておけと忠告する。まともな働き口はなく、客入りなど望むべくもない。荒谷からすると渋谷は“終わった場所”も同然だった。

 戸惑う寿恵子は、このままだと商いを諦めてしまったかもしれない。寿恵子の認識を変えたのは、老婆が握る「おにぎり」だった。話し声を聞いて出てきたカネ(梅沢昌代)の握り飯を寿恵子は買って帰る。鰹節を醤油とみりんで炊いたおかかは絶品で、しゃけも子どもたちに好評。渋谷の良いところと悪いところの両方を、寿恵子は体験することになった。

 寿恵子が見学した物件は障子が破れ、蜘蛛の巣が張っていたが、1階が二間、2階が一間の間取りで庭もあり、リフォームすれば使いものになりそうだ。やぶ蚊は掃除やどぶさらいをすればなんとかなるだろう。荒谷によると、線香を焚いて対処しているとのことで、近所の助け合いはないようだった。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「国内ドラマシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる