『呪術廻戦』「渋谷事変」に立ち向かう虎杖悠仁 第1期を通して得た呪術師としての自覚

『呪術廻戦』第1期が描いた虎杖悠仁の成長

 ついに放送開始となる『呪術廻戦』「渋谷事変」は舞台が現代に戻り、再び虎杖悠仁を主人公とした物語として進んでいく……。とは言ったものの、「懐玉・玉折」や『劇場版 呪術廻戦0』を観た後だと、『呪術廻戦』が虎杖悠仁だけの物語には到底思えないのだ。五条悟、夏油傑、乙骨憂太、伏黒恵、釘崎野薔薇、禪院真希、狗巻棘、パンダ……京都校のメンバーの名前も挙げ出すとキリがないが、登場人物それぞれに物語がある。そんな中でも特にアニメ第1期の中で成長し、メインキャラクターとして作品の看板を背負う虎杖悠仁の現在地を改めて振り返っておきたい。

「生き様で後悔したくない」虎杖悠仁が見失った“正しさ”

TVアニメ『呪術廻戦』PV第4弾

 虎杖悠仁は、不思議なほど身体能力に優れているところ以外、ごく普通の青年だった。しかし、学校の先輩が夜中の校舎で封印を解いてしまった“両面宿儺”の指を飲み込んだことで、宿儺が虎杖の中で目覚める。本来、呪物を人間が取り込めば、その肉体の支配を奪い受肉するのに対し、宿儺の指は相当強いもののため、受肉もおろか普通の人間なら即死するはずだった。しかし虎杖は死ぬどころか、自我さえ保てていた。千年間生まれてこなかった“宿儺の器”としての耐性を持っていた彼は、「呪いの王」がこの世に完全復活することを恐れる呪術高専によって秘匿死刑が決まる。五条悟が上層部に掛け合ったおかげで、「宿儺の指を全て取り込んでから」という条件で死刑は保留となり、虎杖は呪術師になるべく呪術高専に転入するのであった。

 第1期の彼を振り返って印象的だったのは、少年院での事件と吉野順平との出会いだ。どちらのエピソードでも、虎杖の“信念”が濃く描かれる。少年院では2度目の無免許運転で下校中の女児をはねた男の遺体を母親の元に持ち帰ろうとした虎杖と、「ただでさえ助ける気のない人間を死体になってまで救う気はない」という主張の伏黒が衝突。この時、虎杖が祖父の遺言と死を通じて“大勢の人間を助け、正しい死に導くこと”にこだわっていることがわかった。

 しかし、吉野順平を救うことができなかった。呪霊の真人によって目の前で魂の形をおもちゃにされた挙句、殺されてしまったのだ。この経験を虎杖はずっと、忘れないだろう。順平は言わば真人が虎杖を攻撃するために殺されたようなもので、自分自身がその死の原因になってしまったことを虎杖は自覚している。そして生まれて初めて抱いた殺意を、真人に向けた。しかし怒りに我を忘れ、自分の身を顧みない彼の道を正したのは術師・七海建人である。

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