『らんまん』徳永教授は大窪も切ってしまう人間に? 「日本人は器用」の評価に滲む悔しさ

『らんまん』徳永を変えてしまったものとは

 虚しさの中で徳永が見出したのは、外国で認められている日本人の緻密さを活かし、顕微鏡を使った解剖学で世界に対抗すること。それ自体は決して間違った考えなどではなく、発想の転換で現実に立ち向かっていく徳永の強さを感じさせる。だが、『源氏物語』に出てくる夕顔を愛でる彼の“情緒”は勝ち負けにこだわるあまりに失われたように思えた。それこそが徳永の本来の魅力であり、当初は拒絶していた万太郎との間に絆を生んだ大切なものであったはずなのに。徳永が万太郎に命じたのは、教室内の標本を充実させること。言い方は違えど、それは田邊の「専属のプラントハンターにならないか」という誘いと同義である。

 給料がもらえるだけありがたいと自分を納得させようとする万太郎を気にかけるのが大窪(今野浩喜)だ。波多野(前原滉)や野宮(亀田佳明)が万太郎を歓迎する中、大窪が複雑な表情を浮かべていたのは彼自身が徳永の目指す世界に違和感を持っているからだろう。万太郎に示す棘のある態度に隠れた大窪の優しさに胸を打たれる一方、「俺は切られたよ」というラストの台詞に驚きを隠せない。生徒たち一人ひとりに愛情を持っていた徳永は自分との考えが合わない人間を簡単に切るようになってしまったのか。万太郎の今後が危ぶまれる。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『らんまん』【全130回(全26週)】
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:神木隆之介、浜辺美波、志尊淳、佐久間由衣ほか
作:長田育恵
語り:宮﨑あおい
音楽:阿部海太郎
主題歌:あいみょん
制作統括:松川博敬
プロデューサー:板垣麻衣子、浅沼利信、藤原敬久
演出:渡邊良雄、津田温子、深川貴志ほか
写真提供=NHK

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