『らんまん』神木隆之介の変化が問われる田邊の訃報 手を取り合えないカギは他者理解?

『らんまん』神木隆之介の変化が問われる

 ああ、惜しい。非常に口惜しい。心にぽっかり穴が開いたみたいだーー。

 放送中の朝ドラ『らんまん』(NHK総合)を観ていて、同じような気持ちになっている方は少なくないだろう。このところはずっと急展開が続いていたのだが、その最たるものがやってきた。そう、主人公・槙野万太郎(神木隆之介)に多大な影響を与えた人物の一人である田邊彰久(要潤)の訃報だ。

 いまの『らんまん』に対する悔しさは2種類ある。そのうちの一つはもちろん田邊という主要人物の喪失だが、もう一つはけっきょく最後まで彼と万太郎が手を取り合えなかったこと。植物に関する話を笑顔で交わす2人の姿を見ることは叶わなかった。2人が肩を抱き合い、熱い植物学トークを繰り広げる日がやがてやってくるのを願っていたのは筆者だけではないだろう。そして、おそらくその日は遠くなかったはず。だからこそ、なおさら悔しいのだ。

 最近の『らんまん』のカギ(=主題)になっているのが、「他者理解」や「受容」というものだと思う。つまり、他者を認め、受け容れるということ。出自も、社会的な立場も、生まれ持った才能も、人はそれぞれ違う。これを互いに認め合い、受け容れ合うことが社会や文化をより豊かなものへと発展させるのだ。

 事実、学歴のない万太郎を田邊が植物学教室に迎え入れてから、日本の植物学界は急成長を遂げていたことを私たち視聴者は知っている。万太郎は幼い頃から夢見ていた植物学者の世界で認められ、その姿に田邊も発破をかけられることになった。が、田邊が自身の取るべき行動も発すべき言葉も誤ってしまったため、2人は決裂してしまった。いや、実際のところはボタンの掛け違いに過ぎないものだったと思う。しかしそれが最終的には袂を分かつところにまで発展してしまったのだ。

『らんまん』田邊彰久は朝ドラ史に残る人物に 要潤が演じきった“もうひとりの主人公”

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 天真爛漫な性格で植物学者の道をひた走っていく万太郎の才能を、田邊は認められなかった。いや、認めざるを得ない圧倒的な才能を、その事実を、彼は受け容れようとしなかった。とはいえ、彼のことを非難する視聴者はいなかったのではないだろうか。田邊の置かれている立場上、譲れないものがあったのは明らかだ。

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